第16話資料室

入館手続きを終わらせた私は取り合えず地理の確認だ!と考えてキョロキョロ見回していると。


「何をお探しかね?」


ご老人が私に近づきながら話しかけてきた。


「地理の知ることができる資料と鉱物の情報、後は薬草の種類と見分け方の資料なんかありませんか?」


私が知りたい情報について聞くとご老人は。


「ではこちらじゃな」


直ぐ近くの本棚から巻物を一巻、○ャンプサイズの本を二冊取り出して近くのテーブルに一つずつ置いてくれた。


「では、ごゆっくり」


ご老人にお礼を言い、私は席に着くと先ず巻物を広げた。


地図はこの国の王都を中心に簡単な方向と周辺の主要都市の場所と名前しか載っていなかった。

 これはちょっと狭くない?周辺国の情報が無い一切無い、まさかこの国しかないって訳じゃ無いわよね。


私は地理情報は諦めて次に鉱物の情報が載ってる本に手を掛ける。


今更だけど読めるのよね。

 言葉も通じるし日本語書いてるのに通じてる。

 それにこっちの本も読める。

 まるで翻訳されてるみたいに、まあ、便利だし助かってるから文句は無いんだけどね。


そんなことより鉱物の情報、情報を制する者は世界を制するってマクスウェルさんが言ってた。


えっと、確か精霊銀と神金、後魔鋼だったわよね、どれどれ?


ナボルタ、精霊の魔力がしみ込んだ銀。

 採掘された場所によって色が変わることが有る。

 一番多く発見される色は緑銀色をした物が多く発掘される。

 火山で発見されたものは赤銀色をしている。

 火山で発見された精霊銀は僅かに火耐性を上げる効果が報告されている。


オーテルサ、神が作り出した金

 淡く光る性質が有り、僅かに神聖魔法に似た魔力を発している。

 アンデットはこの光を避ける傾向が有ることが確認されている。

 採掘量は非常に少ない為貴重、稀に古代遺跡から出土する発掘品が神金で作られていることが有る。


アラトラム、長年魔力の高い地域で魔力がしみ込んだ鉄を鋳造した鋼

 魔力が高い地域に稀に有る鉄、魔力の高い地域でも極一部の鉄にしか魔力が溜まらないため。

 魔力の高い地域に有る鉄がすべて魔鋼になるわけでは無い。

 鋳造する際も特殊な製法が有る為、魔鋼で作られた装備は貴重である。


なるほど、コレクター魂が疼きますな~是非手に入れてみたい。


えっと次は薬草の種類と採取方法よね。

 私は次の本を開いて見る、内容は結構詳しい見たい。


ヒール草、草原でよく見かけることができる薬草。

 主に葉に薬効が有り、煎じて冷やした物がポーションになる。

 朝の早い時間帯が一番葉に薬効を蓄える。

 葉のみを採取することが好ましい。


キュア草、森の木陰で見かける薬草

 主に根に薬効が有り、磨り潰し水と溶いた物が解毒ポーションになる。

 夕方の時間帯が一番薬効を蓄える。

 根を掘り返して採取することが好ましい。


この二種類かしら、でも載っていた薬草の挿絵が私の持っている薬草と違うのよね。

この分だと私の持ってるポーションは作れないんじゃ無いかな。


私は、一通り情報が手に入ったので、巻物と本を本棚に戻しカウンターへ行くとご老人が。


「もう知りたいことは集まりましたかな?」


ご老人は優しい笑顔で訪ねてきてくれた。

 私も笑顔でお辞儀をすると。


「ええ、ありがとうございます。

 今、知りたい情報は手に入りました」


私がお礼を伝えるとご老人は。


「最近は、この資料室に来る若者はいなくてね。

 儂の仕事はもっぱら掃除と本の破損確認ぐらいしかなくてのう。

 少々寂しくも有ったのじゃ」


ご老人は寂しそうに呟くので、私も少し寂しく思ってしまった。

 地図はあまり役に立ちそうでは無かったが、それ以外は役立つ情報だったと思う。

 特に薬草の本は採取方法までしっかり載っていた。

 登録したての初心者冒険者には必要な情報なんじゃ無いかしら?


「そうでしたか、でも初心者なら絶対必要な情報が有ったと思うのですが?」


私がご老人に尋ねると、ご老人は苦笑いを浮かべながら。


「そうなんじゃが、登録したばかりの初心者冒険者は、今日食べる物にも困っている者も多くてな。

 入館料も払えないありさまなのじゃ」


ご老人は、私の疑問にも丁寧に答えてくれた。

 確かに貧困に喘いでる者にとって小銅貨1枚でも払えないかもしれない。


「でしたら登録した初心者冒険者は初回だけ無料にしてはいかがですか?」


私がそう提案すると、お老人は悲しそうに横に首を振り。


「貧困に喘いでいる者は字が読めん、じゃから無料になっても来るかどうか・・・」


そうか、識字率か~アイナちゃんが宿帳の字を読めてるみたいだったから。

 読める物だと思い込んじゃったわ。


「でしたら、読んであげるのはどうでしょう?」


私の提案にまたもご老人は首を横に振る


「この資料室は儂一人で管理している。

 1人2人なら読んで聞かせることもできるが大人数は無理じゃ」


ご老人の説明を聞き、納得したがそれならばと。


「でしたら一斉に集めて読み聞かせるのは如何ですか?」


私の提案を聞くとご老人は説明してくれた。


「毎週6の日に講習会は開かれているのじゃが。

 午前中は戦闘訓練で、昼を挟んで学習訓練になるのじゃが。

 大体の者はギルドから出される昼飯が目当てなため、昼を食べると帰ってしまうんじゃよ」


ご老人の講習会の説明を聞いた私は、ならばと。


「学習訓練を午前に持ってくることはできないのでしょうか?」


「その話は儂からもギルドマスターに言ったことは有るのじゃが。

 戦闘訓練をさぼられて、死亡率が上がるよりは。

 学習訓練をさぼられたほうがまだマシなんじゃと」

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