第4話商人ペック
朝になって、私は晴れやかな気分で、森の木陰亭の1階にある食堂に居た。
もうね昨日の自分に、何うだうだ悩んでんのよ!って言ってあげたい。
答えは簡単でした。
硬貨が、美術品としての価値があって、換金できないなら。
硬貨を美術品として、売ってしまえばいいじゃない。
どっかの古代遺跡から出土した、古代の貨幣って言って、売りつけてしまおう。
なんて頭の良い、私は天才だった。
何?だれでも思い付く?最初っから気付いてた?良いじゃない、気付けたんだから。
結果オーライよ。
え?まだ山ほどある、イベアイテムどうすんだって?あ~あれわね~どうしようかしら?まあそのうち少しずつ処理していきましょ。
甘い物は、アイナちゃん釣る餌にでもしようかな。
きっと喜んでくれるはず。
私が、こんなことを考えながら、食堂にいるのは、もう一つ試したいことがあるためだ。
有ったでしょ、使いようのないゴミアイテムが。
そうそうあれです、初級ポーションです。
あの運営の嫌がらせとしか思えない、譲渡不可とか言う、呪いにも似たいやがらせ。
そりゃね、自分専用装備で、レアアイテムで、自分しか使えないってことならいいわよ。
でもね初級ポーションって消耗品よね。
しかも、レベルカンストの私に使った所で、体力ゲージが1ドット動くだけしか回復しない!私、回復職よ?そんな1ドットしか回復しないアイテム使うくらいなら、自前のヒール掛けるチューの。
なら初心者さんに上げたいじゃない。
なのに、譲渡不可って言う、もはや呪いのアイテムにしかならないって言う。
そんなゴミアイテムな初級ポーションも、この世界なら譲渡できるかもしれない。
なんて考えた私は、食堂で冒険者ポイ格好の人にや、話しかけやすそうな人を探しながら、ゆっくり食後のお茶を嗜んでいるのです。
ん?そのお茶どっから出したんだって?そんなの、ストレージの消費アイテム欄にあった、飲み物を出して飲んでんのよ。
そのおかげで、冒険者じゃ無くって、商人風の格好の人がこっちをちらちらと。
でも残念、この紅茶、入れてある状態で、ストレージに保存されてる物を、出して飲んでるだけだから。
茶葉は確か無い・・・あれ?ルームアイテムにティーセットが有ったから、茶葉もある?うーんあったっけ?気になった私は、アイテム欄を漁ってみたら、なんとありました。
フレーバーアイテムか~それじゃ覚えてないことも、稀に有るわね。
一余説明、フレーバーアイテムってのは、世界観や設定を深堀するためのアイテムよ。
お嬢様設定とかで、午後のお茶会とかに使うアイテムね。
もしくは、華麗な執事をロールプレイがしたい人向けかしら。
あ~〇執事のセバスさまステキ♡
あら私ったら脱線しすぎてしまったわ、そんな訳で紅茶の葉も、ティーセットも、あるから紅茶入れようとすれば入れられるわね。
ちょっと、考え事と言う名の妄想に脱線してしまったけど、私の目の前には、お誂え向きの女性冒険者が3人。
朝食を食べながら、どんなクエスト受けるか話し合ってるみたい。
紅茶も飲み終わったし、そろそろ動こうかしら。
私が、ティーカップを置いて動こうとしたその時。
「すいませんお嬢さん、少しよろしいかな?」
先ほどまでこちらを伺っていた、商人さんが声を掛けてきた。
え?そっち?私は冒険者さんたちに、声を掛けようとおもてたんだけどな~
仕方なく、座りなおした私は、話し掛けてきた商人さんに向き直り、笑顔で「はい、どうぞ」と答えた。
商人さんは向かいの椅子に座り「いきなり声を掛けてしまい、大変失礼いたしました。
私は商人のペック、王都で店を構えている者です、それでですね、まことに申し上げ辛いのですが、あなたの使っていたティーカップを、ぜひ譲っていただけないでしょうか?」
ペックさんは、テーブルに額を付け、頼み込んできた。
さっきまで使ってたカップって、消耗アイテムの紅茶カップよね?飲み終わったら勝手に消える。
私は自分の常識で考えながら、机の上に置いたカップに目をやると、そこには、中身の無くなったカップが残っていた。
ゲーム時代なら、紅茶を飲み終わると勝手に消えてなくなるはずの器が、しっかり残っていた。
自分の常識と食い違った現象に、心の中で盛大に驚いたが、顔には出さず「このカップですか?」と呟きながら、手に持って持ち上げてみた。
カップは持って見ても消えず、手に確かな感触を残している。
そんな、私にとっては不思議現象を見つめていると、ペックさんがもう一度。
「売っては戴けませんか?」と顔を上げて聞いてきた。
私にとってはゴミアイテムだし、売ってあげるくらい、いいんだけど。
“このまま”ってのわね~私は悩んだ末に。
「このままではお売りできません」と断った。
すると、すごい形相でペックさんは「なぜですか?お金なら小銀貨までなら出しましょう、どうか!」と食い下がった。
私は、そんなペックさん見つめながら「ですから、このままではお売りできません」と困ったように答えた。
ペックさんは尚も「なぜですか?」と聞いてくるので。
私は大きなため息を一つ吐き。
「私が口を付けた物ですから、このまま渡すのはさすがに・・・」と答えると。
ペックさんは右手で顔を隠し「あ~」と納得したように天を仰いだ。
ペックさんは自分の早とちりと、思慮に欠けた行為を詫び、私はカップを洗うために、調理場に入れてもらい、カップを入念に洗った。
そりゃペックさんの早とちりだって分かっても、よく知らない男の人に自分の使った物を売るのは抵抗がある。
だから入念に洗わせてもらった。
ペックさんもそれでいいと、言っていたので、洗い終わった後に再度交渉になった。
「では改めまして、そのカップを小銀貨1枚と大銅貨1枚で売っていただけないでしょうか?」
私は、先ほどより高くなっていることに驚き。
「先ほどより、高くなってますがどうしてですか?」と聞いて見た。
すると、ペックさんは頭を掻きながら「迷惑料と言うことです」と呟いた。
私はそんなに迷惑とは思ってないけど、くれるって言うんだし良いわよね、と考え「ではそれで」と言い、カップをペックさん渡し。
私は、小銀貨1枚と大銅貨1枚、合計で11000ローン手に入れた。
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