旅先にて4

4:58

「おじさんなんて大嫌い!」


旅先の夜、そう大きな寝言を言って目が覚めた。

自分でもびっくりした。

あまりの声量に飛び起きた。何ごと!?って。


新海誠監督作品の『天気の子』、天野陽菜ちゃんとお母さんの形見と思しき雫型のネックレスに対するとあるひとの推測の記事を読み過ぎたのか、はたまた少女時代愛読していた不思議遊戯が懐かしくなってオープニングテーマを繰り返し聴いていたからか……。


何かの儀式で巫女となり、式に参列するもののその衣装束が誤っていたとのことで責められ討論になった。その装束を用意したのが、何故か伯父だった。


伯父は基本的に自分の意見を曲げない。その頑固さは見ていて時々わたしですら嫌になる。夢の中の伯父も、そのままの伯父だった。


自ら用意した衣裳束を否定され難を付けられ、伯父は怒鳴り散らした。わたしはわたしで、間に挟まれただ居た堪れなかった。


「これがうちの(家系の)ならわしなもんでね!」


そう吐き捨てた伯父の言葉は、祖父の葬式で言った伯父の言葉そのままだった。


いつもそうやって、他者との衝突ばかりを起こす。妹の母はもういつも肩を落としていた。どうしたらいい?と娘のわたしに相談を持ち込むことが常だ。いやいや、兄弟間のことは自分で解決してくれないかと何度思ったか……。

末の弟(叔父)は、呆れて祖父のことも祖母のことも見捨てて家を出ていった。


現実味のないイベントの中にあったのは、リアルな現実の母方の家系にまつわる薄暗い人間関係の闇だった。


たぶんお察しの通り。

わたしは、どうもそちらのおひとたちとは価値観が合わないのであまり好感はないのである……。



いやはや、それをなぜこの楽しいはずの旅先で思い知らないといけないのか。しんどい事この上ない。ホルモンバランスの周期的な低下のせいだろうか。もう勘弁して欲しい。




そして、この旅。

一応夫の両親に会うために宿を取ってのことだったのだけれど、急な申し出が会えなくなった。確かのこの世上では納得なのだけれど……それならそうと、もっと早くにそう決断して欲しかった。


エアコンがなくても過ごしやすい山の中。

Wi-Fiはないし、客室はなんだか物寂しいし、生理前だし。こんなことなら、家にいたかったな。……まあでも、楽しんでいたのは嘘じゃないんだけれど……。


そんなことを、パソコンのキーを叩きながら思う夜明け。

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