ある青年の数奇な人生

青山響

第1話 数奇な運命の始まり

私は九州のある田舎で生まれました。

 その日、私の先祖の墓の前に、2匹の黄色いイタチがまるで人のように立っていました。イタチは、ずっと叫びながらお墓に頭を下げ続けていたそうです。


私の祖父・東條一誠は、先を照らす光の如くという意味で、私に【光(あきら)】の名を与えました。

 それは、これから始まる私の運命を案じてつけたのでした。

 何故なら、かれは古来陰陽術の長であったため、私の誕生にまつわる不吉を感じ取ったのでした。


私の誕生した2日目に、村でネズミが大量発生しました。ネズミの大群は村中の鶏やアヒルを食い尽くしました。


また、その間、2人の村人が山中で、不可解な死を遂げました。

  村の人たちは私が不吉な子と言い、何度も私を村から追い出すように村長に頼みました。


しかし、村長は私の叔父であり、私を村から追い出すことはできませんでした。


私が1歳になると、村では干ばつが起こり、農作物は全滅しました。

 私は生まれつき病弱で、すべては私の誕生のせいであるかのように、村人たちは一層私を忌み嫌うようになりました。さすがに、今回は村長も抑えることはできませんでした。


私の家族と村人たちの溝がピークに達したちょうどその時、村人全員を黙らせる出来事が起こりました。


その日の正午、村の入り口からうちの玄関まで、百台ちかくの高級車が並びました。


それは、祖父・東條一誠がしばらく封印していた古来陰陽術の六芒星占いをすることになったためでした。生涯最後の占いをするのです。


当時、村人は初めて知りました、祖父はその有名な【黄麻鬼手】であり、私の家族は古来陰陽術を操る【黄麻一家】であり、祖父は16代目の継承者でした。


その日、祖父に会いに来た人は、ほとんど政界と財界の大物たちでした。


 祖父は生涯で3,964回占いましたが、一度も外れたことはありません。


しかし、占いをするのは、寿命を縮めるので、高齢の祖父はしばらくやめていました。それほど、この占いは人々の人生に大きな影響を与えるのです。


なぜ封印していた占いを再開したのは、私のためでした。

 すべての参加者に、私の年齢くらいの女の赤ちゃんを連れてくることを命じました。祖父はその中から、一人の赤ちゃんを選んで、私と婚約をさせます。

 選ばれた赤ちゃんの家族は、祖父の占いで富を得ます。

 赤ちゃんたちの観相や手相で慎重に選びました。結果、選ばれたのは長崎に住んでいる小さな会社を経営している平野達男でした。

 この大物集団の中、まさか自分が選ばれると思っていなかった彼は心底この幸運を喜びました。


その日のうちに、私と彼の娘との婚約を結びました。


それで、こんな不吉と言われる私でも婚約者ができました。彼女の名前は平野紅子(ひらの べにこ)です。


紅子は3カ月私より年下で、結婚は紅子の21歳の誕生日です。その日まで、彼女は処女の身を貫き、私たち二人は会ってはならない約束をしました。


不思議なことに、それ以来、村に災いはなくなりました。


婚約のおかげで命数が変えられ、病弱だった私は健康になる一方、祖父の体調はどんどん悪くなっていきます。60代の祖父は80代のように見えます。その年にして黒かった髪も全部白髪になりました。


私が10歳の時、祖父が私を裏山に呼びました。私の両手を持ち、神妙な面持ちで私の顔を見つめました。

 何か大きなことが起こりそうだと感じて、私は怖くて声も出ません。

 祖父は聞きました、「光よ、黄麻一家の17代目の継承者になる準備はできているか?」

 私はそれを聞いて、大喜びでした。これは私がいつも切望していたことです。

 叔父が祖父に一生懸命懇願しても、継承者として選ばれませんでした。なぜ黄麻一家の継承者を隔世代の私を選びましたか、と私は祖父に聞きました。


祖父は寂しそうにため息をつきました。

 継承者になることは良くないことだと言いました。古来陰陽術の風水も占いも天の秘密を覗くことです。運気の本来の流れを変え、天意に逆らうことになります。。

 したがって、この道を歩む同業の者たちは、しばしば盲目または聴覚障害者になったり、ほとんどの人はいい死に方をしません。

 だから、継承者を選ばずに、彼の代でこの運命を打ちとめようとしました。

 しかし、 私が生まれつき邪気に冒され、命数を変えないと長生きできないので、私に伝承し、私に運命に抗う力を与えようと考えました。


継承者になるしかない、これが私の運命です。生まれた瞬間からこう運命づけられていました。


その日、私は山の頂上にひざまずき、ナイフで指を切り、3滴の血を大地に垂らしました。 1滴目は天と地の神々に、2滴目は野暮の魂と霊に、3滴目は先祖代々に献上しました。


それで、私は古来陰陽術師・黄麻一家の17代目の継承者になりました。祖父は黄麻鬼手と呼ばれていますが、彼は私に崑崙という称号を与えてくれました。


祖父になぜ崑崙と呼ばれたのか聞いたところ、祖父は私たちの先祖、そして風水・古来陰陽術は中国の崑崙山から始まったと言っていました。


崑崙で始まり、崑崙で終わる。私は最後の継承者でありますように。


それから、祖父からいろんなことを教わりました。私は風水や陰陽術を覚えるのは非常に早く、祖父は私の才能を称賛しました。


「古龍経典」という風水界の古書があります。祖父は35歳で全部習得しましたが、私は14歳のときに龍脈(大地に潜む龍の気)を探す方法を習得しました。


私は古来陰陽術に夢中でした。私は友達が一人もいない内向的な少年でした。村人たちは私を不吉な人物だと密かに噂していましたので、同年代に疎外されていました。

  これは私にとって長い間慣れてきたことです、まったく辛く感じませんでした。最も耐え難いのは、私は21歳になるまで風水・陰陽術を使って人を助けることを、祖父が厳しく禁じていたことです。


能力があっても、学んだことを生かすことができず、そのような無力さが私を苦しめていました。


 ある日、私をよく可愛がってくれた隣のおばあさんの肩に暗い炎がちらつき、薄暗くなっているのをみて、おばあさんの命の灯が消えることを悟りました。

 案の定、2日後に畑を耕していたとき、おばあさんは暴走した農耕の牛に踏み殺されました。


そして、ある日、クラスメートの女の子・伊藤文子の顔に青い光が見え、口元2センチ離れたところに赤いニキビがあることに気づきました。これは姦淫を犯す運命でした。

 翌日、彼女は下校途中で隣村のチンピラにトウモロコシ畑に引きずり込まれ、乱暴されました。


それを知って、私はひどく苦しみました。知っていたのに止めることできなかった、私も同罪ではないでしょうか。


その後、私は文子と目を合わすことすらできなくなりました。

 しかし、そんなある日、彼女の右肩上に薄黒い炎が点滅するのを見たとき、彼女が屈辱に耐えられず、自殺しようとするのがわかりました。


本当にもう仕方がないので、私は密かに文子のお父さんと会って、娘の状況を話しました。ロープで縛り、3日間耐えれたらもう死ぬことないと教えました。


そしたら、文子は助かりましたが、逆に私は病気になりました。


私は頭痛、発熱、嘔吐、下痢のあと、昏睡状態になりました。


3日後目を覚めたら、悪い知らせがありました。


 祖父が亡くなりました。


18歳の年、私は最も尊敬していた祖父を永遠に失いました。


母によれば、私が昏睡状態になった翌日、祖父は一人で裏山に入りました。


祖父は自分自身の最悪の風水である場所を見つけ、穴を掘り、棺すらなく自分を生き埋めにしました。


祖父がどうやって生きて埋めたのかは誰にもわかりません。


 生き埋めされたところがローソクの陰陽の陣に囲まれ、とても不気味だったそうです。


私は祖父の生き埋めされたところで、三日三晩泣きつづけました。


祖父は私を救うためにこれをしたことを、私は知っています。彼は最後の命を私に使いました。


このことは私に大きな衝撃を与えました。まるで祖父を殺したような気分です。


それ以来、私は学校を中退し、祖父の古い家に引きこもりました。毎日私と共にしたのは、祖父が残した古来陰陽術の書籍だけです。


そして、孤独な私を救うものがあります。


それは私の婚約者・平野紅子の存在です。彼女は私の信念になり、孤独な私の唯一の救いです。


それは私の祖父の生涯の最大の願いでもあり、私と彼女が結婚することを望んでいました。彼女だけが私の不吉な運命を解消できると祖父は確信していました。


悶々とした引きこもった日々が3年も経ち、やっと私は21歳の誕生日を迎えました。

 その日、これまで見たこともない一台の高級車が私の家の前に止まりました。

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