おまけの短編小説

遊星迎撃隊―Merry Christmas Ver.

第1話 [AD2511]痛恨の休暇取り消し

 只今、時刻は11時50分。

 あと10分で勤務終了だ。


 10分後には自由の身となる。一週間の休暇を満喫するのだ。


 嬉しい事に、美少女秋山由紀子あきやまゆきこと会う約束を取り付けている。そう、今夜のクリスマスイブは彼女と過ごせるのだ。

 彼女はまだ高校生だからホテルで一泊なんてできないのだけど、食事をしてスイーツを食べて、聖なる夜を満喫できるんだと心が躍っていた。


 後9分。ボクは時計を見ながらにやけていたのだろう。隊長に注意される。


「おい、遠山。もうすぐ交代だからって気を抜くんじゃない。何時スクランブルがかかるか分からないんだからな」

「硬い事言わないの、大尉殿」

「あと8分か」

「大尉は奥さんとデートですか?」

「多分子守りだ」

「家庭的ですよね」

「まあな」

「そういう大尉もにやけてますよ」


 斉藤大尉は笑いながらボクの頭を小突く。

 ここは宇宙巡洋艦ラバウルの格納庫脇にあるパイロット待機室。

 

 ボクたち二人は緊急発進スクランブルに備え、ここで待機しているのだ。


 その時、艦内放送がかかった。


「緊急事態発生。緊急事態発生。斉藤和馬さいとうかずま大尉と遠山玲香とおやまれいか伍長は特殊D装備にて発進せよ。繰り返す。斉藤和馬大尉と遠山玲香伍長は特殊D装備にて発進せよ」


「マジですか?」

「マジだな」

「クリスマス休暇取り消されるの?」

「一日延びるだけだ。気にするな」

「今夜、約束があったのに」

「明日に延期してもらえ」

「そんな……」


 そう、私たちはテロ組織WFA(世界信仰協会)対策として衛星軌道上に配置されている巡洋艦ラバウルに乗り込んでいる。人型機動兵器トリプルDパイロットとしてその脅威に対抗すべく、出撃の機会を待っていたわけだが、本当に出撃するとは思ってもみなかった。

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