第2話 ハドロン改発進
ボクたちはそれぞれの機体に乗り込んだ。コクピットに座る。AIは既に起動しており、律儀に挨拶してきた。
「こんにちは、遠山伍長」
「はい、こんにちはララちゃん」
「今日の任務は対WFAではなく、小惑星破砕任務となります」
「え? 私聞いてないんだけど?」
「現在、装備を特殊Dへと換装中です。発進まであと300秒」
「あ、そうか。特殊Dって小惑星破砕弾頭を使うやつなんだっけ」
「今さらとぼけないで下さい。遠山伍長」
「ごめんごめん。ララちゃん。作戦の詳細を表示」
「了解しました」
ララちゃんはこの
「何に欲情しているんですか。作戦内容を確認してください。発進まであと270秒」
「ごめんごめん」
こういう少しふざけたやり取りができるのもいい。さすがボクが設定したAIだ。とは言っても、制作者は秋山由紀子嬢だけどね。
作戦内容は小惑星の破砕。
予測落着時刻は午後10時ちょうど。場所は東京湾らしい。
何ぃ? カップルで溢れるクリスマスイブの東京を救うため、ボクはデートをキャンセルさせられたの?
一瞬、行きたくないと思った。しかし、AIのララちゃんには即見破られた。
「バカップルの恋路を邪魔してやろうとか考えていませんか? まさか図星ですか?」
「うーん。ごめん」
「もう、いい加減にしてくださいね」
「わかったよ。まじめにやる」
ボクはヘルメットを着け操縦桿を握る。
「発進まで200秒です」
「了解」
その時、艦長から通信が入った。
「斉藤大尉、遠山伍長、ご苦労。小惑星防衛機構が小型の小惑星を見逃していたのだ。小惑星の直径は約300メートルだ。ハドロン改の対小惑星破砕弾頭で破壊できる。予想落着地点は東京湾だ。このまま落ちてしまえば東京湾一帯に甚大な被害が発生すると思われる。この小惑星を破砕してくれ。頼むぞ」
「了解しました」
「了解」
なんて迷惑な小惑星だ。でも、こいつをやっつけないと女が廃る。由紀子ちゃんの為にもやってやる。
「遠山伍長」
「何? ララちゃん」
「加速には核融合ブーストを使います。ビビらないでくださいね」
「ビビらないしチビらないわよ」
発進まで150秒。装備換装終了のアナウンスが響く。
戦術核を装備した対小惑星破砕弾頭、通称ゼウスの
さあ何時でも来い。ボクの恋路を邪魔するやつはぶっ飛ばしてやる。
機体は発進用のカタパルトに接続された。眼前のモニターは静かにカウントダウンをしている。
5……4……3……2……1……0
「ハドロン改出ます」
強烈な加速Gに潰されそうになりながら艦外へと飛び出す。
目の前に青い地球が見えた。
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