第7話 風紀委員はあの子の妹①!?
「はぁ、授業ってやっぱりめんどくさいよねぇ」
「まぁねぇ。だからこうしてさぼってんじゃん」
「なんであんなに授業って眠たくなるんだろ? 有紗ちゃんと楓ちゃん分かるぅ?」
ある学校の日、あたしは友達の『前田梓(まえだあずさ)』と『秋山楓(あきやまかえで)』で屋上でさぼっていた。
理由は単純明快、すっごく退屈だからである。そして時間を潰すのには心地の良い屋上の風に当たっているのである。
「そういやさ、最近有紗って本当に気疲れしてるよね、しかも教えてくれないし」
「有紗ちゃん、彼氏いるなら素直に吐いた方がいいよ。JKしかいない女子高じゃ、色恋沙汰とかにみんな、飢えてるし。下手な動きしてると迫られちゃうよ?」
「もうすでに経験済み。この前なんか、みんなで追っかけて来て、ここは動物園かと思ったわ。余計に疲れたよ」
今、梓が言ったように女子高ってのは本当に男がいないせいで、恋愛ごとには敏感なのだ。男性の先生と関係を持つ人もいるらしいし。
だから怪しまれつつも、あたしは突然できたメイドさんの事をずっと黙っていた。
メイドさんって存在があたしの家で同棲してるなんて、普通の恋愛話よりも常軌を逸したやばさだ。言えるわけがない。まぁだから色々と疲れるんだけど。
「はぁぁーーー、もう色々めんどいなぁ」
あたしはそう言葉に出しながら、大きなため息をつく。
そんな時、手にっていた携帯が急に震えた。どうやらlineの通知が来たようだ。あたしはすぐに画面をタップしてメッセージを確認した。
『お嬢様。こんにちわ。今日は大学が早く終わりそうなので先に夕食を用意しています。ゆっくりと帰ってきてください』
という文書が、メイドの『九条朱音(くじょうあかね)』さんから来ていた。
「ふーん……」
それを見て、なぜかあたしの顔は緩んでいた。ただ横の二人はあたしのそんな表情を見逃さない。そしてすぐさま悪友二人はあたしにツッコミを入れてきた。
「なににやけてんの有紗ぁ? 誰からのメッセージですかぁ?」
「有紗ちゃん、彼氏、彼氏なんでしょ? 顔すっごくにやけてたよ」
「べ、別ににやけてないし」
そう指摘されて、あたしは携帯をポケットにしまい、そして片方の腕で顔を隠した。いやいや、にやけてなんかないし。何かの勘違いだ。
だが三人でわちゃわちゃしているそんな時、授業終了のチャイムが鳴り響いた。
「あ、授業終わった」
「今の時間は12時、ご飯の時間だね」
「梓と楓はどうする? 今日、弁当作ってないからあたしは購買に行くけど」
「あたしらも無いからいいよ」
「うん、いこいこ」
三人でそう話し終わると、そのまま校舎に続く扉を開けた。そしてそのまま階段をのんびりと降り始めた。しかし、そんな時あたしたちの前に厄介な人物が現れた。
「あなたたち、やっぱりさぼってたのね」
「「「げ!?」」」
その顔を見てあたしたちは一気に嫌な顔をする。そこにいたのは眼鏡をかけた短めの黒髪の少女、『藤宮優香(ふじみやゆうか)』であった。
「いっつもあなたたちは!! 真面目に授業受けなさい、後輩たちも真似しちゃうでしょ!?」
「そんなの知らないでしょ。授業が暇なのがいけないの?」
「そんなふざけた理由認められるわけがないでしょ、高宮さん。学校はそもそもで勉強をする所、そして決められたルールを守る訓練をする所でもあるの。それを毎回毎回……」
また始まってしまった。彼女はいつもこうだ、くどくどと飽きずにあたしたちに説教をする。
この『藤宮優香(ふじみやゆうか)』という女生徒は、学校の風紀委員をしており、腕にその腕章を身に着けている。ものすごく生真面目な堅物性格で、いつもあたしたちのような不良生徒に絡んでくる。
初めて会った時、こんないかにもな人間がいるんだと驚いたものだ。そして初めてさぼりを指摘されてからというもの、なにかと彼女はあたしたちをマークしている。
「今回の事もそうですが、前には髪を染めることも注意しましたよね? それにスカートの丈のサイズも短すぎます。高宮さんだけじゃなくて、前田さんや秋山さんもですよ、本当にあなたたちは」
(あぁ、邪魔くさいのと出会ってしまった)(ったくめんどくさいなぁ)(どうする、有紗ちゃん、楓ちゃん?)
この人、完全なお説教モードに突入してしまった。仁王立ちしながら、どんどんとあたしたちの校則違反を述べていく。これが始まると昼休みが終わってしまう。はっきり言って付き合ってられない。
まぁだからすることはただ一つなんだけどね。
「風紀委員さん、後ろ、いや階段の下かな? 先生が呼んでる声が聞こえるみたいだけどけど?」
「え? 先生? どこにいるの?」
あたしは委員長が昇ってきた階段の方向に視線を外させた。そしてそのタイミングで一気にそこからダッシュして、彼女を振り切った。
「じゃ、先行くね」
「本当に騙されやすいな、風紀委員さまは」
「昼休みすぐに先生がそんな都合よくいるわけないでしょ」
「ちょ、あなたたち!! まただましたわね!!」
後ろで顔を真っ赤に染めて、怒り狂う風紀委員の『藤宮優香(ふじみやゆうか)』。あたしたちはこんな状況を笑って楽しみながら、一気に走り抜ける。
そしてそのまま食堂へと向かっていった。ただその時、あたしはきがつかなかったのだが大きな落とし物をしてしまった。
「もう、あの三人は……。ってあら、高宮さん。携帯落としてるじゃない? ちょっと高宮さ~~ん!! 待ちなさい!!」
後ろで何か言ってる。それは分かったが、あたしはそのまま気にも留めなかった。
★★★★★★★★★★
「ふふ、それは大変でしたね、お嬢様」
「まぁね。いっつも突っかかって来るから大変だし。やれ、さぼるなとか、やれ、服装が乱れてるだとか、邪魔くさいったらありゃしない」
あれから数時間後の午後7時、学校も終わり、家の中でメイドさんと食後に食器を洗っていた。そして今日あったことを、彼女にだべっていたのである。
「でもお嬢様がさぼるのがいけないと思いますよ。お気持ちは分かりますが、目を付けられないようにふるまうのもある種の対策になりますし」
「そうかもしれないけどさ。それでもルールにガチガチに縛られる人生は嫌なんだよね」
食器をジャバジャバと水で洗いながら、少し愚痴を漏らすように言葉を紡ぐ。そんなあたしにちょっと微笑みながらメイドさんは会話を聞いてくれた。
「でもさぁ、もっとめんどくさいこと起きたんだよね。てかこっちの方がショック……」
「どうしたのですか!?」
「携帯落としたんだよねぇ。今日、全然使う機会無くて、家に帰ってから気が付いたの。多分学校だけどさ、今から取りに行くのめちゃだるいしなぁ」
「でも早く取りに行った方がいいですよ。学校内ですが、個人情報も入っていますし、悪用される可能性も0ではないです。なんなら私もお嬢様に同行しますよ?」
「い、いいっていいって!! あたしだけでいいから」
メイドさんはそう言って妙にスキンシップを迫って来る気がする。あたしは思わず、赤面しながら断った。この人、けっこうグイっと来るから、心臓に悪い。
「とにかく学校に探しに行ってくるから、遅くなったらママに連絡しておいて」
「あ、お嬢様……」
あたしは九条朱音(くじょうあかね)さんの制止を振り切り、玄関で靴を履いた。そして家の扉を開けようとした。しかしその時、急に家のチャイムが鳴ったのだ。
「ふえ!? こんな時間にいったい誰だろう? 今出ますよぉ」
新聞配達、それともママが荷物を頼んだのだろうか。あたしはそのまま玄関にいたのですぐにドアを開けた。だがそこには思いもよらない人物がいた。
「お邪魔します。高宮さん」
「げ!!? なんであんたがここに!!」
なんと出てきたのは『藤宮優香(ふじみやゆうか)』だったのだ。
「お嬢様、どうしました? 大声を上げて」
声を上げてしまったことで、メイドさんも扉の前にやって来てしまう。だがその瞬間、『藤宮優香(ふじみやゆうか)』の表情が一気に変わった。
「お、お姉ちゃん。本当にいた。な、なななんでこんなところにいるの!! 一体どういうことか説明してください!!」
「お、お姉ちゃん~~~~~!!!!!?」
彼女が言った一言に、あたしはただ驚くだけであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます