第3話 大胆な重なり
「好きってどういう事!!?」
あたしは目の前にいるこの女の発言に度肝の抜いていた。
「はい。そのままの意味でございます!!」
「そのままってだからどういう事って言ってんの!!」
なんと、今日突然できた美女のメイドさんがあたしに向かって告白してきたのである。全く持って意味が分からない状況だった。
「ふざけんのも大概にしてよ!! まずあんたとは初対面、そして女同士でしょ!! 好きとか意味が分からないから」
あたしは至極真っ当な意見をこの九条朱音さんとかいう女性に投げかける。しかし言われた相手はなんかきょとんとしており、言っている意味が分からないかのような表情を見せていた。
「あ、あのお言葉なんですが、初対面で女同士なのに好きになってはいけなんですか?」
そして妙にもじもじしながら顔を赤らめて上目遣いでこちらを見てくるのだ。く、かわいい。いや、そんなことない。自分の中のよく分からない感情を押し殺し、再度反論する。
「それがおかしいの!! 普通のは男と女の人が恋愛感情を抱くもんでしょ? それなのに女の子同士ってやっぱりおかしいの!! あんた、学校のつるんでる女友達の事好きになる? ましてや知らない女の人を好きにって変でしょ!!」
あたしは怒涛の勢いで、彼女の言葉を反論する。しかしあたしが言いすぎたのか彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれるのが見えた。
「ちょ、なんで泣いてんの!? いや、そこまで強く言ってないじゃん!!」
慌てて側に近寄るが、そのメイドさんはさらに泣き出してしまう。
「だって初めてお嬢様のお母さまに写真を見せていただいた時に一目惚れしちゃったんですもん!! 女の子なのに好きになっちゃんだもん!! うえぇえん~~!!」
「って、止めてよ!! 声がでかいって!! ちょ、泣き止んで!!」
そして大声を出してあたしに抱き着きながら、泣きじゃくってきたのである。いったいどういう事、パニック、パニックである。
「ちょっと有紗ちゃんどうしたの!? 朱音ちゃんの声がしたけど!!?」
「な、何でもないよ! ちょっと転んじゃって!? 心配しないで」
そして騒ぎすぎたせいか、下にいるママが声をかけてきた。こんな状況ばれても嫌なので何とか誤魔化す。しかし、なんかこのメイドさんいい匂いがする。
「そう。あ、そうそう言い忘れたけど朱音ちゃんも今日から家に泊まるからよろしくね!!」
「え、うそ。どこで寝るのさ!?」
「隣の部屋が空いてるでしょ? もう荷造りはしてあるし。あともう一つ、朱音ちゃん実はさっき、二十歳の記念で一緒にお酒飲んだんだけどもしかしたら疲れてるかもしれないし、付き添ってもらってもいい?」
「え、お酒?」
そのフレーズを聞いて、あたしは抱きしめてきたメイドさんの顔を見る。すると先ほどの泣き顔はどこへやら、すわったような顔をしており、目がトロンとして顔が真っ赤になっていた。
「じゃ、頼んだわよ!!」
そしてそのままママの声は聞こえなくなった。
「酔ってるじゃん!!」
思わず、渾身の突っ込みをあげてしまう。完全に酔っている顔であった。別にお酒臭くはないけど、もしかして弱いんだろうか。しかしそんなツッコミも束の間、メイドの九条朱音さんはまたあたしに抱き着いてくる。
「ちょ!! あんた何して」
「あぁ、お嬢様の体、いい匂いがする。えへへ、なんで私、初対面の子のそれも年下の子に向かってお嬢様なんか、ノリノリだなぁ」
「きゃ!?」
思わず、自分でもびっくりするくらいのかわいい声を上げてしまい、そのまま押し倒されてしまう。そして目の前を見据えると、なんとメイドさんがあたしを見てすっごくたまんないような顔をしていた。
ちょ、これはまずくない?
「はぁ、お嬢様かわいいです。すっごくかわいいです!!」
「ちょ、待って待って!! おかしいから!! えぇ、えぇ!!?」
「私、もうお嬢様の感情を抑えられません!! キ、キスしてもいいですか!!」
「ちょ、出会って日も立たないのに、キスはおかしいでしょ!!?」
「でも、近くで見たら本当にきれいで、お、お嬢様!!」
「ちょ、あたしら女同士でしょ!! や、やめ!?」
あたしの抵抗も虚しく、彼女はそのまま口を近づけ来る。うそ、本当にあたしキスしちゃうの? 女の人と!?
意外と恐怖はなかった。ただメイドさんの甘い香りが漂って自分まで惚けてきそうだ。そして口と口が重なり、そのままキスをされた。
「うぅん、ぅぅ」
「うぅん、はぁ」
あたたかい。そして気持ちがよかった。ふわふわと頭がぽぉっとなって芯から温まる気がした。ただそんな時間は長くは続かない。
「あ、はぁう」
「え!?」
メイドさんは気が抜けた声を出すと、なんと口を離してそのまま床にへと突っ伏してしまい、そしてそのまま寝入ってしまった。
そしてその瞬間、あたしは一気に我に返った。
「う、うそ、あたし!!」
信じたくないが、今まさに衝撃的なことをやってしまったのだ。女の人と
「キ、キスしちゃった~~~~~!!!!!!!!」
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