追加精神

「あ、やっと解った」


 帰還してから訓練場に籠り、しばらくするとユウキがスッキリとした顔で出てきた。


「お母さんどうしたの?」


 1人で訓練場に籠っていたので暇でウトウトしていたマキナは適当に答える。


「新形態に変身できたよ」


「新形態?」


「大型の生き物に変身した時にそこから人の上半身を生やすことが簡単にできるようになったよ」


「どゆこと?」


「実際にやってみるね」


 周り目が無い事を良いことに適当に身に着けていた服を脱ぎ去る、いくら体を自由に変化させることができても身に着けている物までは変化させらないのでいつもは大きく変化させることはあまりないのだが、今回は体全体を変化させるようだ。


 ユウキの体が大きく膨張して3メートルほどの球体になり、8本の脚が生えて巨大なクモの姿になった、マキナに配慮してかそれとも手抜きなのか簡略化された姿だ、そのクモの頭からユウキの上半身が伸びて遺跡で見た女性のような姿に変身した。


「あーそういう事かぁ」


「なんか反応薄くない?」


「いやぁもっと凄い姿を見たことあるし、その形態自体も前にやってたのよね?」


「あーそうだね、こういった変身の効率が良くなっただけだもんね……」


「ちなみにどれくらい効率が良くなったの?」


「体力的には10分の1以下」


「え、それ凄くない?」


「そうなんだよね……」




その夜……。


(おい、どういうことだ!)


(え、アレ?!)


 精神世界にて、消したつもりだった女性がうれしそうな顔が向かってきた。


(お前の記憶は素晴らしすぎるぞ)


(え、どゆこと?)


(以前の私は私の愛を求めていたが男同士の愛というのもあるのだな!)


(えぇ……)


(そう、真実の愛の形に私はいらなかった、私は2人を照らす照明になりたい)


(え、なに言ってんのこの人)


 よく見ると下半身はクモではなく人の物になっている。


(そして私が明るさを調整して雰囲気を盛り上げたい!)


(もう消える気がないのでしたら自己紹介をお願いします)


暴走を始めた女性を止めるようにカルラが横やりを入れる。


(あ、私の名前ですか、○○○○ですけど?)


(え、なんて?)


(だから○○○○!)


 女性は普通に発音しているようだが、ユウキにはビニールを擦る音や人の声を早送りにしたような音が聞こえるだけでとても人が発する音には聞こえない。


(あぁ、もう)


 女性の方も固有名詞故に通訳されないため伝えることができずにイラついていいるようだ。


(もうラクネラでいいわよ、あんたの記憶にあったクモ女のキャラの名前よ、それでいいわ)


(あ、はいよろしくです)

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