兵士の帰還

「ほうとうにねぇ、分体のお母さんも私も無駄に苦労したんだから」


「それについてはごめん、そしてまだ終わってないのか……」


「しかしユウキは元に戻ったんだな、なら進軍も行けるな」


「わっ、レティさんいつの間に!」


「ついさっきだ、ちょうど分体が消える寸前だな、とにかくユウキが元に戻って良かったよ、これで奪われていた領土も奪還できるな」


「え、奪われたってそんなにヤバかったの?!」


「あぁ、実は少し押されてる、まだ大した土地じゃないとはいえ、領土が取られているんだ、上はカンカンだよ」


「そりゃでしょうな」


 周りにいる兵士達もこれから進軍する気まんまんである。




「転生者がいなければ多分押し切れると思う」


 それを聞いたレティは大声をだし、周りに伝える。


「みんな、これから反撃の時間だ、取られた倍以上の土地を確保するぞ!」


 レティの声で盛り上がり、声が響き渡り進み始める。




 ユウキ達が進軍していく先には大きな戦力は無く、ユウキ達なしでも押し返していけた。


「なんかおかしいな……」


「そうですね」


 戦闘している兵士達と違い後ろでたまに援護射撃をしている程度のユウキ達はこの戦闘が上手くいきすぎる事に違和感を覚えていた。


 用心しすぎる方が良いので、伝令係を一旦中央へ向かわせ、他の場所で異常がないか確認させる、一応の用心として目印として小さなユウキの分体を付着させておく。


 進軍しすぎても国同士の事を把握しきれないので一旦元々の国境にある拠点まで戻り状況を整理する。




「ひとまずは進行したが、いったんここで拠点として待機する、幸いにも物資はほとんど減っていないため節約して飯を食べる必要はない」


 レティが兵士達に呼びかける、飯の事は諦めて直ぐに休もうとしていた兵士達にとっては朗報だった。


「と言っても酒はないがな」


 そういうと一部からブーイングが来た。


「一応まだ最前線なんだよ、酒で機能を落とす訳にはいかんだろ」


 そういえばまだ戦闘中だったと気づきブーイングが少なくなった、それから見張りの順番を決めてからそれぞれ順番に夕食をとった。


 それから夜明けまで襲撃に備えていていたが特に問題は無かったので順番に休み始める。


「とりあえず一日目は襲撃は無しか…」


 昼頃になると伝令が戻ってきた、伝令係りに特に異常は無くユウキの分体も無事だった。


「後は政治屋に任せるけど完全に決着がつくまで待機だそうだ」


 レティが兵士達に知らせるとは安堵してぞろぞろと持ち場に帰っていった。














「一週間何もないんですが……」


 知らせがあってから日にちが経ったものの一向に連絡が無かった。

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