威力偵察

 車の外ではあの黒い天使が増援来たと聞いて人が集まってきているが、車から出てきたのはボロボロになった18歳位の少女二人だった。


「みんなあの黒い天使が来たぞ、今はアレだが少し休ませれば大丈夫だ」


 レティがボロボロになったユウキ達を見て沈みかけていた人達に向かって呼びかける。


「あー、うん少し休んだら大丈夫かも……」


 ユウキが元気なく答えると周囲は安堵したようで、それぞれ各々の持ち場へ戻っていった。




「じゃあ2時間後に集合で、打ち合わせ後に突入で」


「はやくね?」


「2時間で作戦会議はつらたんですな」


「作戦もなにも私が行ってどーんしかないと思われ」


 疲労でダウンした二人にはまともに考える気は無かった。




「とりあえず私が水人形を作って様子見しにいって、動ける兵士には近くの水場から水を運んできてもらう感じで」


 25歳ほどの見た目になったマキナが少しだるそうに兵士達に指示を飛ばす、やる気のない声や態度に対して隙が一切ないため、兵士達はとりあえず信じる方向で協力して水を集めに向かった。




「じゃあ水も集まったし、とりあえず威力偵察でもしてみますか」


 マキナが水で人を形を作り、戦地に向かわせた。


「……あー瞬殺だね」


 最初からわかっていたような感じだ。


「どんな攻撃してた?」


 27歳ほどの見た目に変身したユウキがマキナに質問する、2人とも更に老けさせたのは若いと兵士達に説得力がないそうでレティとココの隊長の提案で老ける事にした。


「うーん何だろう、大きい包丁?から斬撃が飛んできた、しかもすごく威力高いし」


「遅い振りからの斬撃か…斬撃の色は?」


 斬撃の色という変な質問に兵士達が首を傾げる。


「色?、そういえば色も変で白枠で真っ黒」


「変な攻撃だし、もしかしたら転生者かも」


 変な攻撃はとりあえず転生者だとユウキは思っている。


「だとしたらかなり厄介ね、普通の攻撃が効かなそうだし」


 マキナが転生者と聞いてやる気を無くす。


「それは偏見じゃないかな、とりあえず兵士達の証言も聞いてみよう」




「自分は斬撃は見ておりませんが炎を纏っておりました」


「自分は氷付けにされました」


「複数の刃が飛んできました」


「自分は水で流されました」


「自分は光ったと思ったらココに戻されていました」




「お見事バラバラだったね」


 証言はすべて食い違い、頭を抱えるレティ。


「でもだいたい予想が出来たよ」


「え、こんなので出来るの?」


「でも対策が出来ないかな……」


「え、出来ないの」


「そもそも能力があれだけとは限らないし」


 証言を聞いている限りアニメか何かの能力っぽいのでその元ネタさえ分かれば対策ができるがユウキが知らないタイトルだった場合ゴリ押すしかない。


「貰い物だから扱いきれてなかったりして」


「その可能性の方が高いね、ちょっと水人形の粘度高めで行ってみて」


「ほいほい」




 一度水で人の形を作った後、懐から白い粉が入った袋を取り出し、人型の水に袋の半分ほど振りかける、人の形が少し崩れたがゆっくりと人の形に戻る。


「あー色忘れちゃった、誰か絵具とか着色料持ってる人いないですかー?」


 当然戦場にそんな物を持ってきている人などいなかった。

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