契約成立

 囲いが完全に解けた時周囲から安堵の声が聞こえてきた、どうやら問題なく元の姿に戻ったようだ。


「あ、あぁ、エリフェス…」


 ユウキを召喚した少年がゆっくりと歩いてくる、彼女もゆっくりと少年の元へ歩いていく。


「本当に、心配した…」


 手が届く距離まで近ずくと勢いよく抱き着く。


「ごめん、でももう大丈夫だから」


「もうどこにも行かないでくれ……」


「うん」




 エリフェスが返事をした瞬間に二人の足元に魔法陣が現れる。


「え、なにこれ」


 二人が困惑しているとあっという間に魔法陣が消える。


「えぇぇぇえええええ!!!」


 いきなり二人が絶叫した。


「……おいおいおいおいおいおいおいおいおいおかしいだろ!!」


 ユウキを召喚した少年が声を荒げるとエリフェスも声を荒げる。


「どういう事よー!!」




 エリフェスが近くにいるユウキの肩を血がでるほどに掴みかかり勢いよく揺さぶる。


「なんで私があんたの使い魔になっているのよ!!」


 彼女の叫びが校庭に響き渡る、それを聞いたクラスメイト達が驚きの声を上げる。


「まぁ、そうなるな……」


「まさか、知っていたのか?」


「いや、もしかしたらそうなるかもしれない可能性だったからな、確信が無いのに言える訳ないだろ」


「そりゃあそうかもしれんが……」


「まぁそう言うなや、もう二度と会えないからな」


 ユウキの体が少しずつ透明になっていた、なんとなくだが元の世界に帰られそうな気がした。


「そうみたいだな、なんだかんだあったけど助かったよ、ありがとう」


「うむ……」




「なんか終わったみたいな顔しているけれど私たちの問題は終わってないからね!」




 気が付けば森にいた…。


「お礼を言われ……帰って、きた?」


 周囲を見回して見覚えのある木々や地面にある飛ばされる前についていた足跡を確認して帰ってきた事を確認する。


「いったいどんな異世界だったんだろ、アレは確実に同郷の人間だったしな、てかあっちにはお約束の使い魔召喚があるか、ちょっと羨ましいなぁ」


(私たちが似たような存在じゃないですかぁ)


 カルラが突っ込みを入れてくる。


「まぁ、そうなんだけどね」


(というか何で向こうでは男の姿に?)


「このままの姿だと変なフラグが立つ気がしたからね」


(あー納得です、私は別にトノガタといちゃいちゃするのは良いのですが何といいますかぁ……、険悪なムードといいうのは苦手でして、さっき私たちを召喚したあの人間はどうやら気持ち悪いくらいに運命がごちゃごちゃしてましたし)


「やっぱ天使(悪魔)だからそういうのが見えるのか、私はどんな感じ?」


(すいません、ユウキの運命を覗こうとすると吐き気が……)


「おい」


 ユウキの前世の記憶をいつも暇つぶしに見ていたのもあり異世界召喚や使い魔召喚などの話にもある程度ついてくることができる。


(いや、本当に見れないんですよ)


「じ、自分の未来は自分で切り開くから……」


(ユウキの記憶の見すぎなせいもあるけれど元ネタっていうのかなぁ、そういうの知ってるせいでぜんぜんかっこよくありませんよ、ユウキの場合は1人じゃないのが原因なだけですよ)


「へいへい」

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