なんとなくで何とかなる話

「戻ってはきたものの…」

あえて声に出してみるが洞窟に虚しく響くだけだった。

(お主よ、これからどうすんのじゃ?)

洞窟に戻ってきたがまだ一つになったままである。

「なんとかして別れないと、んー…」

考えると何故か答えが浮かんできた。

「そういえば靄みたいなのが渡しそびれた力があるって言ってような、まぁいいや…でまず完全に一つになった2体を元に戻すの不可能…え」

(え…じゃないじゃろ…我は別このままでもよいが?)

「そっちがいいのか…、せっかく知り合えたのに触れ合う事ができないのは嫌だなぁ…、なんとかして別れないと、えーっと…また一体を魂ごと2つに分ける事自体は可能だけど、分かれた個体どうしは極めて近い関係にあり、片方が死ねば例えどんな状況下に置いてももう片方も死ぬ…か、じゃあ大丈夫だね」

(そうか、我はお主と残りの…)

「え、嫌だった?」

(そうでは無いのじゃよ)

「とにかく始めるよ」

(うむ、ところでやり方は解るのか?)

「…なんか、解る」

(よいのか、そんなので…)

胸に手を当てて集中する…体が沸騰する感覚があり、いつの間にか目の前に自分と同じ年くらいの女の子が立っていた。

「まぁいろいろ助かった、礼を言う」

「人の姿になってしまったけど大丈夫?」

「そもそも人間の姿になることくらい造作もないことだ、久々に人間になったわ」

体の動きを確かめるように軽く運動を始める、時折人にはできないような動きをして骨が折れたような音が聞こえてきたが本人は気にしていないようだ。

「体大丈夫?…」

「お主の方が脆いであろうが」

「…まぁそうだよね」

「なんじゃ?」

「大丈夫、こっちの話だから」

「ちなみに見た目は年が近い方がよいと思うたのじゃが…どうかの?」

「後、5年追加で」

「う…む」

何か不安そうに体を変化させる、骨の砕ける音や肉のちぎれる音などで結構精神力が削れてしまいそうな音がする。

「これでどうじゃ?」

自分と同じほどだった外見が10代後半位まで成長した、これで姉妹に見えてくれるだろう。

「ありがとうございます」

とりあえずお礼を言ってしまった。

「何故礼を言われるか分からんが…まぁよいか」

「ところでこれからどうします?」

「それより先にする事があるじゃろ?」

「へ?」

「我はフィアじゃ、お主は名はなんと言う?」

「……あ、…ユウキです」

一瞬何を言っているかわからなかったで反応が遅くなってしまった。

「ユウキ、…変わった響きじゃな」

「そうですか?…ってそんな事よりもこれからどうしましょう?」

「ユウキの好きにすればよい、我はどこまでもついて行こうぞ」

胸を張ってどうだとばかりに答える、なんか可愛い。

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