第4話〈こころが思う僕のいいところ〉

「君は他とは違う、かあ……。」

僕はこころに言われたその言葉の
意味をずっと考えていた。

どういう意味なんだろうか…。

僕はなかなかそれがわからずにいた。

でも、こころはその違う点を評価してくれているということなんだろう。

つまり、それが僕のいいところというわけだ。

どんなところがいいのだろうか。

自分のいいところなんて、自分ではなかなかわからないものであるから難しい。

そういえば、他の人は下心が丸見えだから嫌と言っていたな。

僕からはそれを感じない。ということだろうか。

思いつくのはそれくらいしかなかった。

だが、おそらくこれが正解なのだろう。

僕は翌日聞いてみることにした。


「ねぇ、こころ。昨日の件なんだけど。」

「君とは関わってる理由?」

「うん。そう。その件について。」

「もっとヒントが欲しいの?」

「いや、そうじゃなくて、答えが出たからそれを言おうと思って。」

「へぇ。もう答え出たんだ。」

「うん。」

「僕と関わってくれてる理由って、僕からは下心を感じないからでいいのかな?」

「うーん……。まあ、的外れな回答ではないけど、正解ではない。」

「え、そ、そうなの?」

「うん。」

「だって、君からも下心を感じるし……。」

「え、嘘……。」

僕から下心を感じていたのか。そんなつもりはなかった。

「身に覚えはないみたいな顔してるね。」

「うっ…………。」

「まあ、他の人ほどじゃないけどさぁ……。」

「でもやっぱり、男の子なんだなって思う。」

「ど、どういうこと?」

「言わなきゃわかんない?君、結構私の胸見てきたりするじゃん。」

「えっ、ち、ちが」

「隠しても無駄だよ。視線には気付いてるし。変態なんだなって思ってる。」

「そ、そんなぁ……。」

「それに、時々私のことを見ながらニヤニヤしてたりするし。」

「下心は感じてるよ。」

「まあ、他の人よりは少ないけど……。」

つまり、僕は変態と思われていたということだ……。結構、ショック。

「私はそこじゃなくて、君の性格がいいと思ってる。」

「性格が?」

「うん。そう。性格。」

「君は私のことをちゃんと見てくれるから。」

「私のことを、ただのお嬢様とか、そういうのじゃなくて、一人の女の子として、対等に見てくれる。」

「だから君とは一緒に居たいって思えるの。」

「君がまだ私のことを好きなのは気付いてるし、さっきも言ったけど、いやらしい視線とかも感じてる。」

「でも、それを許容できるくらいの性格をしてるの。」 

「だから、一緒にいて不快じゃない。」

「君は特別な存在だよ。」

その言葉は、素直に認められるということだったから、とても嬉しかった。

そして、僕は気付けば想いを口にしていた。

「それじゃあ、僕と一緒に居て、楽しい?」

「うん。楽しいよ。」

「明日もまた会いたいって、そう思う?」

「うん。思ってる。」

「もっとたくさん話したいって、そう思う?」

「うん。話したいよ。」

「それじゃあ、僕と付き合ってくれますか?」

「……………………。」

「こころ?」

「ごめんなさい。」

「それは、できない。」

「そこまで言ってくれたのに、どうして……。」

「私は、君のことは確かに特別に感じてる。」

「だけど、君に恋心を抱いているかと、そう聞かれたら、答えはノーなの。」

「私は、君に恋してない。だから、付き合えない。」

「君がすごく私のことを好きでいてくれるから、申し訳ないけど……。」

「私は、付き合えない……。」

「最初は何とも思ってなかったから、嬉しいとは思わなかった。」

「でも、今は嬉しいよ。君との関係ができて、いいところを見つけられたから…。」

「でも、だからこそ、ダメなの。」

「私は君に恋してるわけじゃないから、君に愛を向けられても、返せない。」

「それじゃあ君の一方通行で、悲しい恋になっちゃうから。」

「だから、私にはその気持ちに応えることはできない。ごめんね……。」

「そっ、か…………。」

僕はまたしても振られてしまった。

今回は以前よりも関係がよくなっていて、

こころの口から好感を持っているような

ことも聞けたから、いけると思っていた。

でも、ダメだった。

僕じゃ、付き合えないのかな……。

どうしたら、振り向いてもらえるんだろう。

こんなにもきっぱり断られたけど、やはり僕は諦められなかった。

だって、先ほどのこころの言葉が本当なら、可能性はまだあるからだ。

先ほどのこころの言葉を言い換えたら、付き合ってもいいけど、それだと僕を悲しませてしまうから、私はそんなことできない。

そういう風に言い換えられると思う。

ということは、僕が彼女に惚れてもらえれば、付き合ってくれるかもしれない。

「ねぇ、こころ……。」

「なに……?」

「僕は今、再び振られて、もう一回考えたんだ。この恋について。」

「でも、答えは変わらなかった。」

「君のこと、諦められそうにないや。」

「だから僕は、諦めないよ。」

「君に嫌われたりしない限り。」

「僕は君が大好きで、どうしても付き合いたいから、だから……。」

「僕のことを好きになってもらえるように頑張るから、そしたら……。」

「僕と、付き合って、くれる……?」

その問いに対して彼女はしばらく悩んだ末に

「うん。いいよ。私とそこまでして付き合いたいなら、私を惚れさせてみて。」

「私のことを好きでいたいなら好きでいていいし、任せるよ。」

「これは君の恋だから、君が納得いくようにするべきだよ。」

と、そう答えてくれた。

「そうか。じゃあ、僕は君が惚れてくれるように、頑張るよ。」

「まあ、せいぜい頑張ってね。私、そう簡単には落とせないと思うよ。」

「ああ、わかってるよ。”こころじょう”を攻め落とすのは、容易じゃなさそうだ。」

「へえ……。”城”と、”嬢”を掛けたんだ。面白いこと言うね、君。」

「あはは…。そう言ってもらえて、僕は嬉しいよ。」

「でも、私のことをお嬢様扱いした。だから、嫌いになる。」

「ええ、ちょ、ちょっと。ごめんってば。冗談だって。許して。」

「嘘だよ。嘘。こっちも冗談だよっ。」

「君の場合は冗談に聞こえないんだよ……。」

また振られることになってしまったが、お陰でいろいろわかったこともある。

そして、確実に前進していると思う。

こころは、優しいな……。僕の気持ちに気付いたうえで、それを尊重してくれる。

そして僕のために振ってくれたんだから、本当に優しい人だと思う。

その言葉に、嘘はなかった。

僕はその言葉全て信じることができた。

そこには、彼女の心からの思いがこもっていたから。

だから僕は、それを信じて、彼女に振り向いてもらうために、ただ、全力を尽くそう。

こころと僕が、いつか付き合って、幸せに暮らせる未来が訪れますようにっ!

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