第101話 これから

「おめでとう!」

「尻に敷かれるなよ〜!」

 祝福の言葉とフラワーシャワーを浴びながら、二人は階段を降りた。


「彩ちゃん、おめでとう!すっごく綺麗だよ。」

「ありがとう。まさか美鈴たちより先に式を挙げるなんて、思ってもみなかったよ。」

「ほんとにね〜?」

「佐藤さん、案外やる時はやるじゃないですか。」

「案外は余計だ。」

「あはは。」

「さぁさぁ、ブーケプルズするからリボン取って。」

 花嫁が持つ複数のリボンを参列者が一人一本ずつ持ち、合図とともに引っ張った。

「あ!私だぁ!!」

 美鈴が持ったリボンは、まっすぐ彩の持つブーケに繋がっていた。

「ふふ、やっぱり美鈴に繋がった。」

「嘘みたい…!」

「次はあんたたちの番だね。」

 彩はリボンを手繰り寄せ、美鈴にブーケを手渡した。


「男もやるぞ〜!」

 そう叫ぶ佐藤の手にはマヨネーズと共にラッピングされたブロッコリーが握られていた。

「ふざけんなー!」

「ガータートスにしろ!!」

 下心丸出しの男性参列者たちに向けて、佐藤は両手でバツを作った。

「バーカ!うちの可愛い嫁さんのガーターなんて誰が渡すか!」

「!」

「佐藤先輩、振り切ってるねぇ♪」

 赤面する彩に美鈴はニヤニヤしながら耳打ちした。

「ほら投げるぞ、受け取れ野郎ども〜!!」

 空高く放り投げられたブロッコリーは山下の頭にコツンと当たり、彼の手の中に落ちた。

「わっ、とっと…。」

 

「結希くんが取った!」

 美鈴は彩の手を取りジャンプした。

「こりゃ、運命だね♪」

 ブロッコリーを獲得した山下はそれを高く掲げた。

「と、とったどー!」

 わぁっと歓声が上がる中、佐藤は山下を壇上に上がらせた。

「えー、見事ブロッコリーを勝ち取った山下さん。まずはおめでとうございます!」

「え?えっと…ありがとうございます?」

 状況が飲み込めないままおずおずと山下は答えた。

「山下さん、恋人いらっしゃいますよね?彼女に一言!」

「えぇ!?」

 無茶振りに狼狽えたが、そんな中美鈴と目が合った。山下は意を決して叫んだ。

「…美鈴、結婚しよう!!」

 皆一斉に美鈴を見た。

「よ、喜んで…!」

 美鈴の返事に場は最高潮。ヒューヒュー!と冷やかす声や拍手が上がり、山下は胴上げされた。

「わっしょい!わっしょい!」

「わ、わぁぁぁ〜っ」

 胴上げなどされたことがなかった山下は、どう反応していいか戸惑ったまま何度も中に舞った。


「おめでとう、美鈴♡」

「な、なんか主役以上に盛り上がってない…?悪いよぉ…。」

「いーの!私達も望んでたことだから♪その代わり、式にはちゃんと呼びなさいよ

?」

「モッチのロンじゃない!彩ちゃんと先輩が居なきゃ式なんて意味ないもん!」

「ふふ。声フェチがきっかけで結ばれるなんてね。」

「彩ちゃんだってそうじゃない。入社当時から”佐藤先輩の声、めっちゃ良い”って言ってたくせにぃ。」

「そっ、それは趣味の範囲でよ!」

「じゃあ、そのどストライクの声の持ち主が旦那さんになった感想を。」

「…幸せです。」

「ヒャ〜♡」

「あ、あんたも近い将来そうなるんだからね!」

さち過ぎる♡」

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