第99話 こんな時にまで
両親の許しを得てからの二人の歩みは早かった。
「姉さん、綺麗だね。」
「あぁ。お前は彼女居ないのか?いつでも紹介してくれて構わんぞ?」
「俺はまだまだ若いから。」
「社会人になってから月日が経つのは早いぞ。」
「へいへい。」
彩の結婚式のために留学先から一時帰国した弟は、うんざりしたように父に返事をした。
「それより、義兄さんは?」
「あぁ、
「こんな時にまで仕事!?とんだブラック企業だな…。」
「なに、クレーム対応が一番上手いのが彼だってだけさ。もう少ししたら来るだろうよ。」
「晴れの舞台の前にクレーム対応か…、心折れそう。俺には絶対出来ないわ。」
「スーパーマンらしいからな、彼。」
「どういう事?」
「そのまんまの意味さ。」
「係長…、こんな時に対応してもらって本当にごめんなさい…俺、俺…(泣)」
「そんな事で泣くなよw話はまとまったんだから、良かったじゃないか。」
「でも、でもぉ…!」
佐藤が号泣する部下を慰めていると、ドレス姿の妻がやってきた。
「全く、こんな時にまでスーパーマンするなんてね。」
「俺らしいだろ?」
「えぇ、とっても。」
ため息をつき、彩は夫の手を引いた。
「もう時間引き延ばせないって係の人が。」
「あぁ、分かった。」
「係長、坂…彩さん、おめでとうございます!!」
「そう思ってるなら今度からはちゃんと自分で対応しな!」
「すみませんでしたぁ…。」
「新人をいじめるなよ(笑)」
「いじめたくもなりますよ。」
ツンとそっぽを向く妻を見て、相変わらずだな、とこっそり思った佐藤だった。
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