第95話 糖分
大人にとっての一週間はあっという間で、それは未来に後回しにしたい事があれば更に早く感じられる。
彩はスケジュール帳を開いてはため息をついていた。
「そんな憂鬱に考えるなって。」
肩を落とす彼女に、佐藤はミルクたっぷりの甘い缶コーヒーを手渡した。
「…なんですかこれは。」
「自分を甘やかすためのアイテム。好きだろ?甘いの。」
「まぁ…。」
いつもはカロリーを気にして滅多に口にしないが、たまのご褒美に甘いものを飲んでいるのをいつの間にか知られていた。
「…私が甘いもの好きだって、いつ知ったんですか?それとも美鈴がペラペラと喋った?」
「俺は部下の好みお見通しなんだよ。」
ふふん、と鼻を鳴らす彼を見て少し悔しくなった。
「随分と余裕そうですね?」
「そう見えるか?」
「えぇ。少なくとも、私を気遣う余裕はあるじゃない。」
「それくらいの余裕は残しておかないと、坂並家ご令嬢様の恋人にふさわしくないだろ。」
「皮肉っちゃって。」
どうやら想像以上に彼は余裕があるらしい。
「この調子なら余裕ですね。安心しました。」
「おいおい、急に俺を追い詰めるなよ(笑)。俺なりの励ましだ。当日はお互い頑張ろう。」
佐藤は文字通り肩に力が入った彩の背中を優しくさすった。
「佐藤さんって、名前の通り甘いですね。」
「おう、甘々だ。でも、やる時はやるぞ。」
そう言って彩に口づけた。
「!」
「はは。やーい、隙だらけ。」
赤面する彩を置いて去る佐藤もまた、彼女に負けないくらい顔が真っ赤になっていた。
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