第92話 報告

 翌日、彩は親友を呼び止めた。

「美鈴。ちょっといい?」

「どうしたの〜?改まっちゃって。」

「ちょっと報告したいことがあるから、今日ランチは外で食べない?」

「いいけど…」

 美鈴が返事をする途中で佐藤が話しかけてきた。

「あ、高田。ちょっと話したいことがあるから今―…」

「それ、私も報告しようとしてました。」

「あ、そうなの?」

 二人の顔を交互に見た美鈴は、何かを察した。

「もしかして…!?」

 美鈴がみな迄言うまでもなく、彩と佐藤ははにかんだ。

「おめでとう!!」

 親友に抱きついて喜びを表し、佐藤にはギュッと握手しその手をぶんぶんと上下させた。

「先輩、本当にありがとうございます!!」

「お、おう…こちらこそ、色々ありがとうな。」


 3人でランチすることにした美鈴達は、天使のオムライスが有名なレストランにやってきた。

「私からのお祝いです♡二人共、好きなもの頼んで!」

 メニューを手渡された二人は、仲良くそれを眺めた。

「私は天使のオムライス一択かな。」

「俺はどうしようかな…。オムライスだけだと食った気にならんしなぁ。」

 ああでもないこうでもないと話している二人を見て、美鈴は安心した。

「良かった、ちゃんと喧嘩しないで付き合ってる。」

「付き合いたてで喧嘩してるのはおかしいでしょ。」

「まぁ、ぶっちゃけ付き合う瞬間は怒られてたけどな。」

「えっ、どういう経緯で付き合うことになったのか気になるぅ!」

「…そのうちね。」

 照れてはぐらかす親友を見て、美鈴は胸が熱くなった。

「こんな日が来るなんて…。私、凄く嬉しいよ…。」

「何言ってるの。」

「まるで結婚式に参加したみたいな言い方するな。」

「それくらい嬉しいってことだよ。先輩、彩ちゃんの事頼みますよ?」

「おう、任せとけ!」

「…ところで彩ちゃん。」

 店員に注文している佐藤に聞こえないように、美鈴は声を潜めた。

「お見合いのこと、佐藤さんにはもう話した?」

「えぇ、話したわよ。何故か・・・凄くスムーズに話を理解してくれたわ。」

「あ、あはは。」

「…お節介め。」

「でも、結果オーライでしょ?」

「まぁね。」

 

 注文したメニューを口にした美鈴は唸った。

「うーん、美味しいぃ〜♡結希くんも誘えばよかったなぁ。」

「また来ればいいじゃない。」

「そうだね、今度はダブルデートの時にでも来よう♪」

「ダブルデート…。」

 佐藤はその響きがなんだかむず痒かった。

「何照れてんですか、おっさんのくせして。」

「ばっ、まだかろうじでお兄さんだぃ!」

「ふふ。」

 夫婦漫才をくり広げる二人を、微笑ましく見つめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る