第91話 もう一度素敵な恋を

「…良いのか?俺で。」

 カクテルに口をつける彩に佐藤はおずおずと聞いた。

「どうしたんですか?さっきまでの威勢は。」

「だ、だってさ…。」

「そんなだから徳永さんに小馬鹿にされるんですよ。」

「えっ、あれ俺馬鹿にされてたのか!?」

「年上のくせに思考が中学生なんだから。」

 彩はもう一度ため息をついて、彼にジントニックを贈った。

「…佐藤さんがいつも希望を見せてくれたから、私はもう一度恋をしてみたいと思うことが出来ました。」

「坂っ、彩…。」

「責任、ちゃんと取ってくれます?」

 彩の問いかけに、佐藤はカクテルを頼むことで答えた。

「カミカゼを彼女に。」

「かしこまりました。」

「…ほんと、何処までもヒーロー気取りなんだから。」


***


 徳永は店を出て一人歩いていた。

(彩さん、今頃佐藤さんとどうなったかな。)

 彼女のことを落としたいと思っていたが、その役は自分でないことに、彼は早い段階で気づいていた。

(僕は所詮引き立て役。ヒーローには敵いっこないな。)

 彼女を救う王子様になれなかった自分を哀れんだが、自分らしくない、と頭を振りすぐに考えを改めた。

(縁が無かったんだ、仕方ない。)

「さぁて!久々にナンパでもして飲み直すかな!」

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