第85話 バイオレットフィズ
三人が美鈴の部屋について数分後、山下も合流した。
「なんかこのメンバーで揃うのってむず痒いな。」
「そうですか〜?私は特に違和感ないですよ♪」
美鈴は机におつまみを広げながらウキウキした様子で答えた。
「美鈴はむしろこの状態を楽しみにしてたんじゃないの?」
「That's right ♡」
「お前なぁ。てことは最初から俺誘うつもりだったのか?」
「いやいや。今日は彩ちゃんとしっぽり飲むつもりでしたよ?でも、いつかはこうしたいなぁって思ってました♪」
「あんたは賑やかなの好きだもんね。あ、何飲みます?」
彩はテキパキと佐藤と山下、美鈴に好みを聞いてお酒を配った。
「今日は予定外のメンバーだけど皆様お疲れさまでした!カンパーイ♪」
美鈴の号令で各々グラスや缶を掲げた。
「ねね、彩ちゃん。私に黙って德永さんと飲みに行った件について詳しく聞きたいんだけど?」
単刀直入に本題を投げかける美鈴。佐藤は日本酒が器官に入り咽た。
「だ、大丈夫ですか佐藤さん!?」
「大丈夫、ゴホッ、ちょっと酒が変なとこ入っただけだけさ。」
「…德永さんなら器用だし、相談に乗ってくれるかなーって思っただけ。」
「ほんとにぃ?」
「結構親しげに見えましたけど?」
カップルで畳み掛けてくる。流石、息ぴったりだ。彩は表情を変えずに答える。
「別に他意はないよ。私は恋愛なんて興味ないし。」
そう言うと、彩は日本酒をぐいっと飲んだ。
「お、それ美味いだろ!俺が選んだんだぞ♪」
話を変えるように佐藤は彩にお酌をする。
「…どうも。なんか上司に御酌してもらうの違和感しか無いんですけど。」
「今日は上下関係とか無し無し!楽しく飲もうや!」
「佐藤さん、また潰れないでくださいね?」
「うっ、肝に銘じておきます…。」
「あはは!先輩、私より早く結希くんちにお泊りしたんですよね〜?」
「すまん、山下くんの初めて俺が貰った!」
「それはないですから!!」
佐藤の機転のおかげで、場が暗くならずに済んだ。それに気づいているのは、彩だけだった。
(…また人助け。)
彩の胸がチクリと痛む。誤魔化すように、またグラスに残った酒をぐいっと飲む。
「おいおい、そんな飲み方して大丈夫かぁ?」
「いーんですよ、手っ取り早く酔っ払いたいんで。」
「酔いたいならちゃんぽんおすすめですよ〜?お客さん、梅酒なんかいかかですかぁ?」
ほろ酔いの美鈴が、空いたグラスに氷もないのにどぼどぼと梅酒を注ぐ。彩は、注がれる梅酒の色がカクテルのアキダクトに似ているな、と朧気に思った。
(…あの日を思い出すなぁ。)
ストレートの梅酒をそのまま飲み干した彩を見て、佐藤は焦った。
「お、おいそれカクテルじゃないんだぞ!?」
「あれぇ、佐藤さんカクテル知ってるんですかぁ?」
「ばーか、酒の知識ぐらいあるわ。」
「へぇ。じゃあ佐藤さん
「え?まぁ、多少ならな。」
「じゃー私に向けてカクテルで一言お願いしますよ。」
「んー…。ヴァイオレットフィズ。ちょっと本来と意味合いが違うかもだけど。」
「!」
「えー、何々私達にも意味がわかるように言ってよー。」
「こらこら。それじゃカクテル言葉の意味なくなっちゃうじゃん。」
「結希くんは意味知ってるの?」
「さっぱり。」
「なんだ〜(笑)」
カップルがいちゃついているのをよそに、彩は衝撃を受けていた。
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