第83話 会議
オフィスを後にする彩を見送った二人は、会議と評して部屋を借りて彩について話を始めた。
「…先輩、意外と鋭いですね。」
「意外って何だ意外って。…今日の坂並、午後から様子が明らかにおかしかったからな。普段絶対否があるときにしか言わない”すみません”を連呼してたし。」
「確かに。先輩との会話、ほぼ”すいません”で返してましたもんね。」
「お前、昼に坂並と何話してたんだ?」
「私が彩ちゃんを傷つけるようなこと言うわけ無いじゃないですか。…ちょっと、打診しただけです。」
「打診?」
「結希く…山下さんが、彩ちゃんと德永さんが夜二人で居るところを見たって言ってたので。」
「!」
德永のことは、佐藤も一緒に仕事をした仲なので知っている。德永は、甘いマスクと言葉で彩以外のその場に居る女性全員を虜にした女性キラーだった。当時の彩はいつも通り受け流し、全く興味を示していなかったのだが、仕事の後半になって仲良くなっていたのを思い出す。
「…あれは仕事のパートナーとしてじゃなかったのか。」
力なく呟く佐藤を美鈴は元気づけた。
「だ、大丈夫ですって!彩ちゃん、彼氏役を探してるだけで本気にしてないですよ。德永さんは器用だから、上手く立ち回ってくれそうだと思って声かけたんだろうし!」
「…そうかな?」
「そうですよ!」
「…じゃあなんであんなに元気なかったんだろう。」
「それは…、私も分かりません…。お昼に話してた限りでは普通だったんですけど…。」
二人は同じ机の角を見つめた。
「…今夜、私の家で宅飲みする予定だったんです。」
「ほう?」
「お昼には深いこと聞けなかったし、宅飲み久しくしてなかったし楽しく恋バナしようかなって。…でも、それがいけなかったのかもしれません。」
「何処が?楽しそうだけど。」
「彩ちゃんにとって”恋愛”は地雷なんです。もう恋をしないどころか、恋を怖がってるんです。昔の恋人と直結するから、思い出さないように恋をしないんです。」
「……。」
「私や他の子の恋バナを聞くのは楽しいらしいんですけど、自分のこととなると頑なで…。佐藤先輩なら、そんな彼女を変えてくれるんじゃないかって勝手に思ってるんですけどね。」
「…話は分かった。坂並が今夜宅飲みを断らなかったら、俺も参加する。」
「へ?」
突拍子もないことを言い出す佐藤に、美鈴は言葉が出なかった。
「あいつの性格だ、宅飲みは自分からは断らないだろ。」
「いや、でも…刺激強すぎません?」
「うじうじしてても時間は経つんだよ。だったら行動するしかね−だろ。」
そう言って佐藤は肩を回した。
「よし、そうと決まれば遅れてる仕事片付けるぞ。坂並の分、お前半分責任持って引受ろ!」
「えぇ〜……頑張りますぅ…。」
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