第79話 即バレ

「今夜、私の家に集合!」


 会社で顔を見合わせた途端美鈴は彩に言い放った。

「…はぁ?」

「彩ちゃん、私に隠してることあるでしょ。」

 美鈴は目を細めて腕を組み、「知っているんだぞ」といったフェスチャーを取った。

「…悪いことは出来ないね。」

 彩は肩をすくめた。

「悪いことしてたの!?」

「や、悪いことはしてないけど(笑)。隠し事はすぐバレちゃうもんだね。」

「ほんとにねぇ。まぁ、私が直接知ったわけじゃないけど?」

「え、じゃあ誰から聞いたの!?」

 一瞬ある顔が過り冷や汗が出る。

「結希くんが仕事の帰りに見たって。最初さ、なんのこと言ってるのか分からなかったよ。」


***


 恒例になっている平日仕事終わりの”ゲームでデート”を楽しみに、画面の前で美鈴が待っていると、突然チャイムが鳴った。


ピンポーン


「?こんな時間に誰だろ…。」

 警戒しながらモニターをチェックすると、そこには山下がマイバックを片手に立っていた。

「結希くんどうしたの!?」

 予定にない彼氏の来訪で、慌てて辺りを片付けてから玄関扉を開けた。

「突然ごめん。…なんか妬けてきて。」

「???」

 訳がわからない美鈴に、照れながらも街で出くわした彩の姿に、美鈴と佐藤との事を思い出した事を話した。

「えっ、彩ちゃん男の人と二人で居たの?」

「うん。かなりマイルドな感じのイケメンだったよ。前言ってた彼氏役頼んでたのかも?」

「彩ちゃんがイケメンと…。」

 意外、と美鈴は顎に手をやった。

「そんな意外なの?あ、もしかしてかなり年上が好みとか?」

「否、彩ちゃんも声フェチだからさ。」

「え!?」

 山下は意外過ぎて夜遅くにもかかわらず大きな声が出てしまった。

「あれ、言ってなかったっけ?私達声フェチがきっかけで仲良くなったんだよ♬」

 確かに言われてみれば美鈴と彩の組み合わせは珍しかった。美形という括りでは同じなのだが、随分とタイプが違う。美鈴はふんわり清楚系な癒やし系、彩は何でも一人で熟してしまいそうなサバサバとした格好いい系。服装の趣味も全く異なる。

 別ジャンルの人間が仲がいい事は男ならばよくあることだが、女性でのケースはまれに思う。山下は、美鈴の言葉に驚きつつもなるほど、と思った。

「大学の時に私が乙ゲーやってたら、たまたま彩ちゃんが画面見えちゃったみたいで声かけてくれたんだ♪それがきっかけで友達になったって訳。」

「彩さんが声フェチとは意外だなぁ。」

「私は意外じゃない?」

「美鈴も意外だけど、彩さんはもっとかな。強い女性ってイメージだし。」

「彩ちゃんは強がりだからなぁ…。ほんとは私よりもか弱い女子なのよ?」

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