第73話 再会

 仕事終わり、彩はとあるBARに来ていた。暫くすると、カランコロンと出入り口が開く音がした。

「坂並さん、お久しぶりです。」

 斜め後ろから男性に声をかけられた。彩は立ち上がり、相手に挨拶を返す。

「徳永さん。お久しぶりです。突然お誘いしてしまってすみません。」

「いやいや、僕も坂並さんとは一度二人で飲んでみたいなって思ってたので。むしろ嬉しいです。」

 徳永と呼ばれた男性は、爽やかに笑って彩を座らせた。

「それで?僕に頼みたいことって、なんでしょう。」

 隣に座り、組んだ手に顎を乗せて彩を覗き込む徳永。歳は若いが、女性経験は豊富であろう見た目と仕草をしている。

「突然のことで驚かれると思うのですが…。」

 彩は言い淀む。本当に頼んでも良いのかどうか。もう少し打ち解けてからでも良いのでは?しかし来月までに距離を詰められるだけ相手の都合がつくだろうか?

 切り出せずに居る彩の様子を見て、徳永はバーテンダーにカクテルを頼んだ。

「アメールピコンハイボール2つ。」

「!」

 彩は彼の注文に心が揺れる。

 カクテルというのは、特別な意味を持つ種類がいくつかある。その中でもアメールピコンハイボールは「分かりあえたら」という意味を持つ。彩が何か悩み、それを打ち明けようかどうかを悩んでいる。その事を徳永は感じ取ったのだろう。

「徳永さん…。」

「はい、これは僕が勝手に頼んだカクテルなので、飲んでも飲まなくても良いですけどとりあえずどうぞ。乾杯!」

「…乾杯。ありがとうございます。」

「うん?何がです?」

「気を使っていただいて。…もう少しアルコール回ったらお話しますね(笑)」

「ほう、酔わないと聞けない話かぁ。坂並さん強そうだし、骨が折れそうだなぁ(笑)」

 二人顔を見合わせて笑い、そしてもう一度グラスをカチン、と合わせた。

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