第69話 甘ったるい朝
翌朝、美鈴は山下より少し早く目が覚めた。互いの素肌が触れ合っている感覚は心地よくもあり、また昨日の事を鮮明に思い出させた。
(…っ、私、昨日結希くんと…!)
思い出すと恥ずかしさで全身が熱くなり、慌てて半身を起こした。
(私、はしたなかったかも…。)
甘い声で沢山愛を囁かれ、一生分かと思う程キスをされた美鈴は、山下に負けず劣らず本能のまま動いていた。
(うぅ…、どうしよう、引かれたかな…。)
頭を抱えていると、隣で衣擦れの音がした。
「…おはよう。」
後ろから抱きしめられ、気だるそうな艶っぽい声が耳元で囁かれた。
「…!お、おはよう…。その…、よく眠れた?」
「んー?…そうだねぇ。」
抱きしめられた腕の力が少しだけ強まる。
「美鈴は?」
「わ、ワラシも眠れたよ!」
「ワラシって(笑)」
笑ったときの吐息が耳にかかる。
「んっ…」
昨日のことを鮮明に思い出していた美鈴は気持ちが出来上がっていたため、些細な刺激で反応してしまった。
「…どうしたの?そんな声出して。」
意地悪な声に変わった彼の手は、いつの間にか美鈴の胸へ伸びていた。
「だ、だめぇ…っ!」
「なんで?」
「あ、朝からこんな事っ…。」
中々辞めてくれない山下。昨日の遠慮しまくっていた彼は何処か遠くへ旅にでかけたようだ。
「き、昨日は嫌だったらすぐ辞めるって言ってたくせにっ!」
「変に遠慮されたくないって言ってたのは誰だっけ?」
後ろから抱きしめられたまま首筋に唇を落とされ、いつの間にか向かい合っていた。朝日で彼の顔がよく見える。意地悪で、そして色っぽい表情をしている。
(ゔ〜、ズルい、そんな顔されたら…。)
「…ほんとに嫌?」
山下は試すような声で彼女に聞いた。
(い、嫌なわけ無い…。)
「…意地悪。」
「好きな子を苛めたい変態ですから(笑)。」
「…もう結希くんはピュアじゃない。」
「えっ。」
「小悪魔変態イケボ紳士だ!!」
精一杯の罵倒だったが、後半は褒め言葉になっていたので山下は笑った。
「ははっ、紳士は一応入れてくれてるんだ(笑)。」
「そりゃぁ、私のこと大切にしてくれてるし…?」
「うん。大切。これからもずっとね。」
そう言って山下は優しく美鈴を押し倒した。
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