第52話 熱

「デラックスいちごパフェとベリーベリーミルクをホットで。」

 カフェに着いた二人は案内されたテーブルに着いて注文をした。

「かしこまりました、デラックスいちごパフェとベーリーベリーミルクホットですね。」

 店員は復唱し、暫くお待ち下さい、と頭を下げてカウンターへ向かっていった。

「メニュー表の写真で見たけど、すんごい豪華なパフェだったよねぇ〜、楽しみ♪」

 美玲は手を合わせ、ランランと目を輝かせていた。

「そういえば結希くん、今日こんなに暑いのにどうして飲み物ホットで頼んだの?」

 不思議そうに美玲は小首を傾げた。その様子に山下はハッとした。

(そうか、普通なら暑いのか…。)

 いちご狩りの間もずっとゾクゾクと寒気を感じていた山下は、無意識に温かい飲み物を求めていた。

「…温かいとが甘みをより強く感じるからね。俺、辛いものも好きだけど甘党なんだ。」

「へぇ〜!甘いものも好きだったんだ。じゃあパフェも分けっこしようよ♪きっと美味しいよ〜♡」

 山下は美玲の純粋な優しい申し出を断れず、引きつった笑顔を返した。


 暫くして店員が注文の品を運んできた。

「お待たせいたしました。デラックスいちごパフェとベリーベリーミルクのホットです。」

「わぁ、すごい!!」

 美玲は先程よりも目を輝かせ、嬉しそうに写真を色々な角度で撮っていた。山下は美玲の様子を目を細めて眺めつつも、止まない悪寒をどうしたものかと思案していた。

「パフェもすごいけど、結希くんのも可愛いね!」

 山下の頼んだいちごミルクは、マグカップからはみ出んばかりのたっぷりのホイップクリームが乗っかっており、そこにピンクのカラーチョコが振りかけられ、てっぺんには小さなうさぎのアイジングクッキーがちょこんと乗せられていた。

「結希くんも撮るよ〜?こっち見て♪」

 山下は盛り付けが崩れないようにマグカップをそっと両手で持ちながらカメラを見つめた。

「うん!いい写真が撮れた♡…結希くん大丈夫?」

「…え?」

「なんだか顔が赤いよ…?それに目線が遠くを見てるっていうか…。」

「だ、大丈夫だよ!!」

 山下は慌てて表情を作った。

「…美玲があんまりはしゃぐから、可愛くて見とれてただけ。」

「っ…と、突然イケボでそんな事言わないでっ!心配して損したっ。」

 いちごかと思うほど真っ赤に頬を染めながら美玲はしかめっ面でパフェを頬張った。

「あはは。一日一回はイケボ聞きたいかなと思って?」

「そりゃぁ、聞けたら最高だけど…。でも、公の場でイケボ使わないで。」

「なんで?」

「…他の人に、結希くんのイケボ聞かせたくない。」

「!」

 美玲の言葉に、山下もカーっと顔が熱くなった。

「あ、赤くなったぁ。これでおあいこだね?」

 ふふん、と得意げに笑った美玲がパフェをひとすくいし、山下に差し出した。

「はい、あーん♪」

「…美玲って、天然たらしって言われたことない?」

 ニッコリ笑う美玲を悔しそうに見つめながら山下はパフェを頬張った。しかし、その途端一瞬忘れていた悪寒が足元から一気に這い上がってきた。

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