第50話 意気込み
土曜日になり、いよいよ美鈴と山下の初デートの日になった。美鈴は朝早くに目を覚まし、洗顔の後に顔のむくみを取るために念入りにマッサージをした。
(記念すべき初デート…!絶対楽しい一日にするぞ♡)
スマホの覗くと、山下からLINEが来ていた。
”おはよ。楽しみだね。道中気をつけて。”
「ふふ♡あー、楽しみ!!」
朝食と歯磨きの後、小一時間ああでもないこうでもないと服を選び倒し、ようやく服が決まったと思ったら次は髪型で悩んだ。
「うーん、これだとちょっと幼過ぎるかな…。」
デートにこれ程心が踊ったのはいつぶりだろうか。そんな事を考えながら、鼻歌を歌いながら身支度を整える。
「やばっ!もうこんな時間…。急いで、でも抜かりが無いように…!」
余裕を持って起きたはずなのに、約束の時間まであっという間に近づいた。出来るだけ冷静に努めながら残りの準備をし、最終チェックに姿見で全身を眺め、持ち物を確認。『今から向かうね』と送り、部屋を後にした。
***
山下は緊張のあまり昨日から眠れずにいた。
「もう7時…。」
約束の時間は10時。今から寝ると起きれない可能性もあるため、観念して布団から出た。顔を洗い、歯磨きをする。どうもまだ眠気が覚めないのでシャワーを浴びる事にした。
(この俺がデートだなんて、未だに信じられない…。)
生まれてこの方、付き合うどころか恋すらまともにしたことが無かった山下にとって、今までの事が全て奇跡だった。そして今日は人生初のデートである。
(失敗は出来ないぞ…。)
目をしっかり覚ますために冷水で全身の泡を流した。
「つっめたっ…!いや、でもおかげで目が覚めた。後は濃いコーヒーでも飲んでおけば大丈……っくしょん!」
流石に冷水シャワーはやりすぎたか、と反省しながら手早く体の水気を拭き取り、髪を乾かした。リビングに戻ると、美鈴からLINEが来ていた。
”おはよ♡今日は楽しみだね♪”
彼女も楽しみにしている。しっかりしなければ。山下は今までいれたことがないくらい濃い濃度のエスプレッソをごくりと飲んだ。
「おえっ!」
恐ろしいほどの苦味に思わず声が出たが、これで眠気は一切無くなった。先程のLINEを返し、この日のために買い揃えた服に着替える。髪をセットし、約束の時間には少し早いが、気持ちを落ち着かせるために出発することにした。
「っくしょん!」
先程のシャワーのせいか、ブルッと体が震えた。
(外は晴れてて温かいし、そのうち体も慣れるだろ。)
パンッと両頬を叩いて、待ち合わせ場所に向かった。
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