第47話 彩の過去

「あーやちゃん。今日は一緒にランチできる?それともまた外で食べてくる?」

「美鈴。ううん、今日は社食にする。一緒に食べよ。」

「おっけー!…ねぇ、この間は誰と食べてたの?気になるなぁ〜?」

「別に、誰だっていいじゃん。」

「そんなつれない事言ってー。そろそろ彼氏作る気になれた?」

「そんなんじゃないよ。ただたまには違う人と違うものを食べようと思っただけ。彼氏なんて私には必要ありません。」

 彩はきっぱりと断った。美鈴が知る限りでは、大学以降彼氏を作っていない。かれこれ5年経っているが、未だに新しい恋人を作る気配は無かった。

「ねぇ、彩ちゃん。もう、誠さんのことは…」

「美鈴。その話はもうしないって約束したでしょ。」

「……。」

 彩には昔、誠という二つ年上の恋人が居た。二人は幼馴染でもあり、大学を卒業したら結婚を約束していた仲だった。

 ところが、彼は留学先でテロに巻き込まれ帰らぬ人に。それ以降、彩は恋愛をしようとしない。美鈴は、彼女があの時から動けていないのではないかと心配していた。

「彩ちゃん。もう、新しい恋人ひとを探したって良いんじゃないかな。そうじゃなきゃ…」

「もうっ!五月蝿い!!」

「彩ちゃん…。」

 彩は乱暴にコーヒーカップをゴミ箱に突っ込み、その場を離れた。

「!」

「す、すまん。」

 直ぐ近くの曲がり角で佐藤とぶつかった。もしかしたら話を聞かれていたかもしれない。彩は会釈をして直ぐに足早に去った。

「坂並…。」

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