第44話 恋人

「えへへぇ。」

 美鈴はスマホのホーム画面を見つめてニヤけていた。

(付き合う記念に撮った写真、よく撮れてるなぁ〜♡)


***


 晴れて両思いになった二人は、帰り際に記念写真を撮っていた。

「はい、笑ってくださーい!」

「なんか照れる…。」

「もうちょっと寄らないと画面に入んないよ!」

 美鈴は山下の肩に頭を乗せ。シャッターを切った。

「!!」

 パシャッ


***


(ふふ。びっくりしてる顔、可愛いなぁ。)

 土日はお互い予定があったため一緒には過ごせなかったが、それでも美鈴は満足していた。待受の画像を見てはニヤけ、金曜の夜のことを思い出していた。

(もうこの写真見てるだけでどんな辛い仕事も乗り越えられそう。)

 スマホと向かい合いながら食事をしていた美鈴を、周りの人間は不思議そうに見ていた。

(そういえば彩ちゃん珍しく誰かとランチ行ってくるって言ってたけど、誰だろ…?)

 美鈴から見た彩は周囲の人と一線を置いているように見えた。

(みんなとは仕事上だけの付き合いって感じだったけど…、もしかして彩ちゃん好きな人出来たのかな?)

 もしそうなら目出度いな、と思っていると、山下からの着信がきた。

「!!」

ピッ

『あ、もしもし、お疲れ様。今ご飯中かな?』

「お、お疲れ様っ!うん、今日は回鍋肉食べてるよ。」

『いいなぁ、美味しそう。社食だっけ?』

「うん。日替わりランチとかもあるから飽きないんだ♪」

『へぇ。ウチは社食無いからコンビニ。さっき行ったら豚骨わさび味のカップラーメンがあったから気になって買っちゃった。』

「えぇ、わさび味とか辛そう!想像しただけで鼻がツーンとしちゃう。」

『あはは。俺、辛いの好きだから試したくてさ。今から食べる。』

「辛いの好きなんだぁ。じゃあカレーとか本場の味求めちゃったり?」

『ずぞぞ。…うーん、本場のカレーよりは日本のカレーのが好きかな。ジャ◯カレーとか。』

「そうなんだ。あ、今食べたね?どう?辛い?」

『うん、辛いけど程よい辛さ。豚骨の濃厚なスープにわさびの香りが加わって後味爽やか、最後まで飽きずに美味しく食べられる。』

「Oh,素敵な声で食レポ聞いたら私まで食べたくなっちゃった。」

『あはは。でも美味しいから一度食べてみて。』

「うん!帰りに探してみるー♪」

『あ、そろそろ時間だ…また仕事終わったら連絡するね。』

「あら、休憩短いんだね…。了解!またね〜♡」

 スマホが通話画面からホームに切り替わった。そこで美鈴は今の時間を目の当たりにする。

「えっ!もうこんな時間!!」

 残りのご飯を頬張り足早にお盆を片付けた。

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