第40話 約束の金曜

”お疲れさまです!仕事、終わりました。ご都合整われましたら、ご一報下さい。”


(ど、どうしよう、めちゃくちゃ他人行儀になってしまった…。)

 送信した後に後悔している美鈴に追い打ちをかけるように山下からの返信がきた。


”お疲れさまです。俺も今仕事終わりました。電話、いつでも可能です。”


(うぅ…”可能です”か…。やっぱ嫌かな、もう私と関わるの…。)

 ウジウジしていても仕方がない。美鈴は思い切って通話ボタンを押した。


ピロリロリロリン♪


『…もしもし。』

「もっ、もしもしっ!お疲れさまです…。」

『お疲れさまです。…今外ですか?』

「えっ、あぁ、はい。すみません、煩かったですか?」

『いえ。…ゲームしないなら、直接会いませんか?』

「えっ。」

『あ、嫌なら良いんですけど…。』

「い、いえっ。良いです!めちゃくちゃ良いです!!」

『ふっ』

「?」

『あ、いえ…。高田さんがめちゃくちゃ緊張してるのが伝わってきて。』

「す、すみません…。」

『いやいや、謝ることじゃないですよ。今、何処らへんに居ますか?』

「今会社の近くの公園に来てます。」

『じゃあそっち向かうんで待ってて下さい。…あ、人気少ないようなら別の場所にします?』

「いえ、大丈夫です。スケボの練習してる人とか居るので。」

『そうですか。じゃあ今から5分ほど待っててもらえますか。』

「えっ、5分!?」

『タッタッタッ……』

 通話口から走る音が聞こえる。

(もしかして、走って向かってる…!?)

『防犯のため、通話は切らないでおきましょう。なるべく早く、着くようにするんで。』

「ありがとうございます…。でも気をつけて来てくださいね?」

(山下さん、めちゃくちゃ優しい…!!私はこんな優しい人を怒らせたんだ…。)

『ありがとうございます。はぁ、はぁ。あ、赤信号…。』

「お疲れなのに走らせてごめんなさい。」

『いや、大丈夫です。はぁ。運動不足でしたし。』

「スタイル良いから定期的にトレーニングしてるのかと思ってました。」

『いやいや、はぁっ。ヒョロヒョロですよ。丈ばかりでかいから、雰囲気でそう見えるだけでっはぁ。』

(…山下さんの息切れでドキドキしてる私は変態だわ。折角一生懸命向かってくれてるのに…。)

「……。」

『はぁ、はぁ、高田さん?』

「は、はいっ。」

『急に黙るからどうしたのかと思いましたよ。はぁっ。』

「ご、ごめんなさい。ちょっと考え事を…。」

「『どんな考え事?』」

「わっ!」

 通話口と真後ろから同時に同じ言葉が発せられたので、美鈴は驚いて飛び上がった。

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