第18話 二人きり

 ハプニングがありつつも、無事店へたどり着いた二人。山下も美鈴も、緊張していた。

(どうしよう、こんな形でデートが叶うなんて思ってなかった…!)

(どうしよう、まさか高田さんと二人きりになるなんて思ってなかった…。)

「少し予定が変わりましたが、今日はお疲れ様です。乾杯。」

「お疲れ様です、乾杯…!」

 二人はぎこちなくグラスをカチンと合わせた。

「今日はすみません…誘っていただいたのが嬉しくて舞い上がってしまって…。」

 一人で盛り上がってしまったことが申し訳なかった。

「いや、そんな気にしないでください。俺の方も三人で、とちゃんと言わなかったのが良くなかったですし…。」

「いやいやいや!ふつう話の流れで三人ってのは分かるはずですから!山下さんはなんにも悪くないです!!」

 慌てて否定する美鈴。それを見て山下は笑った。

「ははっ。高田さんってなんかイメージと違いますね。ずっと楽しい人だ。」

「え、そうですか…?」

「はい。もっとおしとやかで近寄りがたい人かと思ってました。」

「おしとやかじゃなくてすみません…。」

「あ、すみません!そういう意味じゃないんです。なんていうか、俺なんかが近づいちゃいけないっていうか、別の世界の人だと勝手に思ってました。」

 頭を掻きながら美鈴ははにかんだ。

「私、そんな育ち良くないですよ。小さい頃なんて、兄と取っ組み合いの喧嘩して親に叱られたり。」

「え!?高田さんが?想像つかないな…。」

「そうですか?私は昔と変わってないと思ってるんだけどな…。」

 腕を組みながらしかめっ面をする美鈴。山下はそんな様子も魅力的に感じていた。

「…高田さんは僕には高嶺の花です。会社でも、モテたりするんじゃないですか?」

「え!?全然ですよっ!山下さんこそ、スマートだし会社でモテたりするんじゃないですか?」

「スマートだなんて初めて言われました。高田さんこそ俺を買い被りすぎですよ。」

 互いを褒め合い、自分を謙遜するの繰り返しで食事会が終わった。

(もう時間が来てしまった…)

「山下さんっ!」

「は、はい。」

「今日は褒め合い合戦楽しかったです(笑)!また、お食事出来たら嬉しいです。」

 美鈴は真っ直ぐ山下を見つめて言った。

「こちらこそ楽しかったです。高田さんの意外な一面もしれましたし(笑)。」

「先輩には秘密ですよ!」

「はい。秘密にします。」

「…では、おやすみなさい。」

「はい。…おやすみなさい。」

 二人は少し見つめ合って解散した。

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