第17話 約束
山下と美鈴はエレベーターでまた二人きりになっていた。
「「……。」」
(どうしよう、メールでは気にしてない感じだったけど、沈黙が重たい〜。。)
先週のことを引きずっている美鈴は中々自分から話題を振ることができずに居た。
(高田さん、今日なんか怒ってる…?)
「「あの」」
「あぁぁ山下さんどうぞ!」
「あ、いや、高田さんこそどうぞ…。」
「「……。」」
「「あの」」
(また被っちゃった〜!!汗)
(また被ってしまった)
「「どうぞ」」
(どうしようこんな被って…)
(どんだけ被んねん!今度こそ喋るぞ…)
少しの沈黙のあと、山下が咳払いをして話を切り出した。
「何度も被ってすいません。先、いいですか?」
「ど、どうぞ…。」
「この間のこと、逆に気を使わせてしまったようなのでもう一度お食事でもどうですか?」
「はえっ?」
美玲は嬉しさと驚きで変な声が出た。
「え、いいんですか…?」
「もちろん!俺、あんまり自分から誘ったりしないので断られると傷つきますけど、どうですか?」
傷つきますけどどうですか。もはや断ってはいけないジ○イアンのリサイタルのような誘い方だが、美玲には嬉しい誘いだった。
「喜んで!嬉しいです、誘っていただいて!」
満面の笑顔で美玲は二つ返事で答えた。
「おー、高田。今日も楽しそうだなぁ。」
「はい、めちゃくちゃ楽しいです♡」
山下に誘われルンルン気分の美鈴だが、佐藤に食事の件を伝えるのを忘れてしまっていた。それに気づかず、美鈴は本日の業務をこなしていった。
「お疲れ様です、山下さん!」
「お疲れ様です。…あれ、佐藤さんは?」
「え?」
「佐藤さん。…お仕事、忙しかったですか?」
「……。」
誘われたことに舞い上がり、佐藤に話を入れるのを忘れていたことにようやく気づいた美鈴。だがそんなことを山下に言うことは出来ず、焦っていた。
(やばい、忘れてたぁぁぁ!今から先輩に連絡してみるか?いや、だとしても急過ぎる、どうしよう…。)
「…都合悪いようでしたらまたの機会にします?」
「いえっ!せっかく予約していただいたのにそれは申し訳ないですから…!」
「「……。」」
(一か八か…!)
「あの、私と二人じゃ駄目ですか…?」
「えっ…」
長い沈黙が流れる。美鈴は言ってしまったことを少し後悔していた。「距離詰めすぎ。軽い女だと思われるよ?」という彩の言葉が頭を過ぎった。
「…駄目じゃないですよ。寧ろいいんですか?二人きりで…。」
おずおずと山下は答えた。まさか美人からこんな言葉をかけられるとは思っていなかった。
「もちろん!宜しくお願いします!(?)」
頭の中がぐちゃぐちゃのまま美鈴は返事をした。山下はホッとして予約した店へ案内した。
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