第14話 男同士の朝

「ただいま…。」

 酔った成人男性を背負いながらの階段はきつかった。山下は佐藤の靴を脱がせ、ソファに寝かせた。自分は直ぐにスーツを脱ぎ、ハンガーにかけて消臭スプレーを大目にかけてシャワーに向かった。

 さっぱりして部屋に戻ってくるも、佐藤はまだ寝ていた。

「……。」

 いくら酔っているとはいえ、よくここまで深く眠れるものだ、と山下は感心しつつ彼の上着を脱がせ、ハンガーにかけて消臭スプレーをかけてやる。さすがに下は脱がせられないので、そのまま消臭スプレーをかけた。

「…おやすみなさい。」

 爆睡する彼にむけて挨拶をし、山下は自分のベッドへ潜った。


―翌朝―


「うぅ…( 頭 )いってぇ……。」

 長い長い眠りから覚めた佐藤は、味噌汁のいい香りで目を覚ました。

「目覚めましたか。おはようございます、佐藤さん。」

 キッチンに立つ山下が声をかけた。目の前のローテーブルを見ると、二人分の朝食が用意されていた。

「おはようございます…って、俺もしかしてやらかしました…?」

 昨日の記憶が全くない佐藤は冷や汗が流れた。

「やらかしましたねぇ。」

「す、すいません…。しかも泊めてまで頂いて…。」

 佐藤はめったなことでは酒でやらかさないのだが、昨夜の高田の表情を見ていたら自然と飲むペースが速くなってしまったのだ。

「32にもなって、社会人失格です…。」

「はは、大丈夫ですよ。だって昨日は仕事関係なしの食事だったんでしょう?」

 佐藤は山下の優しさに救われた。

「ありがとうございます…。」

「さ、食べましょう。二日酔い酷いようでしたらこれどうぞ。」

 そう言って100%のオレンジジュースを佐藤に手渡した。

「俺の独断ですけど、二日酔いに効きます。しじみの味噌汁と同じくらい。」

「ありがとう、、なんだか世話慣れしてますね。」

「あぁ、酒癖の悪い姉が居まして…。実家に居た時はよく世話をさせられました。」

 だから料理も上手いのか、と佐藤は納得した。

「将来良い旦那さんになれますね。」

「はは、貰ってくれる女性なんていませんよ。」

 力なく山下は笑った。そうだ、昨日の出来事もただのラッキーだ。続くわけがない。

「……。」

 佐藤は覚えている限り昨日の高田の表情を思い出した。

 あれは…、恋をしている女の目だ。

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