第4話 初対面

(今日は待ちに待った打ち合わせの日だ…!)

 いつもより念入りに身支度をし、浮足立つのを必死に堪えて美鈴は出社した。

「おはようございます!」

「おう、おはよう。打ち合わせ今日だったな。」

 佐藤は資料を入念にチェックしている。彼の仕事はいつもミスがなく丁寧だ。美鈴はこの先輩とならどんな仕事も敵なしだろうと思っている。

「時間になったら先方を迎えに行ってくれ。」

「了解です、任せてください♪」

「ん?やけに楽しそうだな。」

「え?き、気のせいですよ♡」

 にやける顔を押さえながら答える。そうだ、仕事に集中しなければ。


 10時より少し前に山下は一二三商事に着いていた。

「すみません。ミドリ食品の山下と申しますが、本日10時より営業二課さんとの打ち合わせに参りました。」

 受付の女性に、家で練習してきた文章を伝える。営業は嫌いだ。元々は製造希望だったのが、どうして真逆の営業に配属になってしまったのか…。山下は極度の人見知りだった。

「ミドリ食品の山下様ですね。担当の者が迎えに参りますので、あちらでお掛けになってお待ちください。」

 受付嬢はやわらかく受け答えしてくれた。山下は少し安心し、ふぅと溜息をついて指定されたソファに浅めに腰かけた。

 やがてエレベーターから女性が一人降りてきてこちらに向かってきた。受付嬢も美人だったが、それよりももっと綺麗な女性だった。

「山下様ですね?私一二三商事営業二課の高田と申します。」

「あ、はい。本日はよろしくお願いいたします…。」

 サラリーマンお決まりの名刺交換をし、エレベーターへと一緒に向かう。

 エレベーターの中は高田と山下の二人しかおらず、少し気まずかったので山下は他愛のない話題で間を繋ごうとした。

「最初に電話に出られた方ですよね。まさか担当の方とは知りませんでした。」

「えぇ。でもあの時はまだ担当は佐藤だけだったんです。後から私も加わることになりまして。これから宜しくお願いしますね。」

 高田と名乗る女性はパッと周りに花が咲いたように笑った。可愛い。そしていい香りがする。

 山下は自分も男だったんだな、と心の中で再確認した。

 

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