第3話 打ち上げ
「高田、来週の水曜日ミドリ食品の山下さんが打ち合わせに来るから10時に会議室取っといてくれるか。」
「はい、喜んで♪」
「お前ほんと楽しそうに仕事するよな。」
佐藤は、いつも明るく受け答えする後輩を心底尊敬していた。
「はい、毎日楽しいですよ!」
屈託のない笑顔を見せる後輩に、尊敬以外の気持ちも抱くのはそう難しくない。
「毎日頑張ってる後輩にご褒美だ、今日飲みに行こう。美味しい焼き鳥を奢ってやる!」
「本当ですか?やったー♪」
先輩の奢りと聞いて美鈴はより一層仕事に力が入った。ゾーンに入った美鈴の仕事は、周りが唸る程完璧かつ早かった。
あっという間に本日の業務を終え、無事定時で退社出来た美鈴と佐藤は、とある焼き鳥屋に来ていた。
「とりあえず生2つと枝豆、あとねぎまに鶏皮、モモとハツ。それぞれ塩とタレ2本ずつでよろしくね。」
「はい、かしこまりましたー!」
店員が注文を受け厨房に戻っていき、直ぐに生ジョッキが二つ運ばれてきた。
「今日もお疲れ、乾杯!」
「乾杯~!」
美鈴は佐藤のジョッキより下にしてグラスを当てた。
「いや~、今日のお前凄かったな。ゾーンに入ったらお前の右に出る奴いないんじゃないか?」
「褒め過ぎですよ~。今日このために頑張ったまでです!」
美味しそうにグビグビと喉を鳴らしてビールを一気飲みした。佐藤はそんな無邪気な後輩を愛おしそうに見つめる。
「…なぁ、高田は今フリーなのか?」
「え?はい、そうですけど…」
「いや、別に深い意味はねーよ?ただ見た目も愛嬌も良いし、彼氏居ないの不思議だなって思って…。」
慌てて佐藤は取り繕った。まだ自分の気持ちを悟られたくない。
「先輩さっきから褒め過ぎですよ(笑)。彼氏、欲しいですけどねぇ~。でも私、いつも駄目男を選んじゃうみたいで。親友にも残念がられます。」
苦笑いして美鈴は残りのビールを流し込んだ。
「駄目男ねぇ。好きなタイプはどんなだ?」
「断然声が良い人ですね!それしか勝たん!!」
そう言い切って生おかわり、と店員に声をかけた。
「声…、声かぁ…。」
佐藤は意外過ぎる答えに黙ってしまった。どう反応するのが正解か分からず、自分もとりあえず残りのビールを飲み干しておかわりをした。
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