お返事


詩織さんへ


あぁっ、泣かないでくださいしおりさん。

私もしおりさんがご実家を飛び出されたこと、2時間睡眠でがんばっておられたのにお医者さんに取り合ってもらえなかったこと、眠れないこと、そしてその間にもしおりさんが懸命にがんばってこられたことを思いますと、自然と涙が出てきます。今のお医者様に見ていてだけてほんとうによかったです

さらにこれから手術をなさるということで、不安でいっぱいだと思います。ですがしおりさんには絶対に良くなってほしいです!私の心からの願いです!


そうしてまた、みなさまとわいわいお話しできます日を心待ちにしております!(みなさまもそう思っておられるはずです!)


私のことはぜひ、笑い話で聞いていただきたいのですが、私は生まれたときに精巣がお腹の中から下腹部へ降りてこなかったのです

それだけでしたらよくある停留精巣という疾患で成長と共に陰嚢にふたつとも精巣が降りるそうなのですが、私の場合は生後しばらくして、幼稚園に上がっても精巣がお腹の中に留まったままだったのです


そしてお医者様から「このままですとガンになる可能性が高いです」という理由から小学校低学年のときに入院し、開腹手術して、摘出してしまったんです


ですので、男性ホルモン由来の競争心や闘争心がありません。同級生が女の子のスカートめくりやえっちな話題で盛り上がるのをただただ不思議に思っておりました

カードにも書きましたが、放課後は祖母の個人商店を手伝っており、それは小学生のときまでさかのぼります。その時に常連のお寿司屋の大将さんから「新敷ちゃんは将来、女形になりなさい」と冗談でよく言われたものでした(その当時はただ、女形ってなんだろう?って思っていました)


少し時間は飛ぶのですが、第二次成長後に幼稚園からずっと好きだった初恋のかたに思いきって告白したのですが「異性として見れない」ときちんと断ってくださいました。今となってはその言葉は真実を的確に突いておられると思います


(性ホルモンがないのに恋をするのかと疑問に思われるでしょうが、あくまで私の場合は性的な衝動ではまったくなく、完成された芸術を見てしまったように、性的なこと抜きで好きになりました。美しい絵画に惚れ込むようにです(ですがそれはお相手に失礼ですよね、人として見ていないのですから…))


また、去年は脳の下垂体異常で入院したのですが、その時の血液検査でも男性ホルモンは私の身体の中にありませんでした。精巣だけで男性ホルモンがつくられているわけではなく、脳の下垂体でもわずかに男性ホルモンは作られるということで、何度か注射で男性ホルモンを血管に注入して下垂体に「男性ホルモンつくってくださーい」とノックして呼びかける処置も行ったのですが、無駄でした


男性ホルモンより女性ホルモンが多い身体ですので、入院時は骨粗鬆症寸前だったそうです。ケガをすると肌が女性ですので治りも遅いです

私としましては、しおりさんからご質問されるまであまり深く考えたことがございませんでしたので、ズバッとお答えできずたいへん申し訳ないのですが、骨格は男で肌や肉質は女性なのではないかと思います。泣きそうなくらい筋肉がつかないんです


この際ですから申してしまいますと、自慰の習慣もありません。他人との性的交渉の経験もありません。ムラムラする、という気持ちが未だにわからない私です

ですがこのようなことをおおっぴらに申しますと

えっちなことが大好きな(自然なことですね)みなさまにたいへん失礼ですから、私の胸の内にとどめています


人間は生殖がすべてではないのですから、まあ…こういう性欲が「無」な変な人もいますよ、というゆるい感じで流したり、笑って受け止めていただけましたらさいわいです


とっても長くなってごめんなさいしおりさん!


そして秘密を早口で言ってしまってとてもとても恥ずかしいーです!

お許しください!

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