四年制大学殺人学部
浅里 幸甚
第1話
…殺し屋になりたい。押入れの中から出てきた、小学校6年生の頃の将来の夢にはそう書かれていた。今の僕は、大学入学を控えて引っ越し準備をしているがあの頃描いていた自分にはなれていない。だが、それは"今は"である。僕は、普通ではありえない四年制大学に行く。殺人学部武器コースに今年の春から行くのだ。目的は、小学校の頃から変わっていない。
引っ越しを済ませて、新しい家に着いた僕はひとまず周囲を歩いてみることにした。スーパー、居酒屋、ホームセンター、と一通り生活に必要なお店がそろっていることが確認できた。明日から大学だし、今日は帰って寝よう。
次の日の朝、大学に入ってみるとびっくりするほど普通だった。殺人学部の同期を見ても、和やかに話をしているものばかりで、自分の目的を見失いそうになる。
とりあえず、席番号が近いものに話しかけて友人になっておいた。名前は頃太郎というらしい。金髪で背が小さく本当に殺しができるのか疑問の残る男だった。それにしても殺人にはぴったりの名前をしている。これは縁起がいいかもしれないな。しかし今の所、普通の大学生かと見まがう程度には平和だ。僕は本当に殺人学部に入学したのか疑問を抱いていた。だが、その真価を次の授業で思い知ることになる。
これから受ける授業では、実際の殺し屋の方を講師に招いて殺しのノウハウを教えられる。ひげ面で殺気のない顔つき、そして低い身長、これらの特徴は頃太郎にどことなく似ていた。しかし、講義を受講する生徒の態度はみな、殺意に満ち溢れた目をしていた。
この時点で殺人を”うまく”できる人間かどうかの差があることを、生徒達から学ぶことができた。受講態度としては良いのだろうが、本番では生き残れないタイプであろう。かくいう僕も、真面目に講義を受講しノウハウを実践するために、帰りにホームセンターでロープを買っておいた。
絞殺をする基本の道具であるため使い捨ての利くものでなくてはならない、しかし耐久性もなくてはならない、という講義の要点を抑えたためホームセンターで購入した。
この地道な一歩一歩が僕の殺したい”あいつ”の喉元に届くことを願う。そのためにこの大学に入学したんだ。絶対に殺してみせる。殺気を目に抱かせながら、その日は眠りについた。
この時の僕は大学内で殺人が起きるとは、知る由もなかった―――
四年制大学殺人学部 浅里 幸甚 @sakamushi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。四年制大学殺人学部の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます