第24話 遠くで戦う友達の元へ
私たちは倒したイグアナどんとホッピングベアーの後片付けをしてこれからのことを話し合っている。強いモンスターに勝ったから私たちはの士気は高い。今ならどんなモンスターにも勝てる気がするとわいわい騒いだ。
「油断はできないがここはひとまず安全だろう」
安全という言葉を聞いて、ひとつ星冒険者たちの顔に笑顔が戻る。その様子を見た先輩冒険者たちからも笑みが漏れていた。
「こらこら、まだクエストは終わってないんだ、気を引き締めて。次のモンスターが来るまでC班はここで待機。今のうちに罠の点検と再設置をしておこう。それが終わった者から交代で休憩してくれ」
みんな指示に従いこの場を離れていく。残った先輩冒険者たちは、次の行動についてまだ話を続けるようだ。
おっと、私も早く罠の点検に行かなきゃ。
先輩冒険者たちから離れレルエネッグ東門の中に鍋のフタみたいな罠を取りに行くと、同じひとつ星冒険者たちが声をかけてきた。
「さっきのアレ、あんたが使ったらしいな」
「ねえねえ、さっきのアレは何ていう魔法なの?」
「もう一回使ってくれよ」
と、質問やリクエストの声が次々に私を襲う!
テンションの上がったみんなの勢いにわたわたしてたら、リアナちゃんとアキューちゃんが間に入って押し寄せてくるみんなを止めてくれた。
「待て待て、そんなに一気に迫られるとこの子も答えられないぞ」
「……順番に、並んで並んで」
二人に止められて少しだけ落ち着きを取り戻したところで私は精霊の説明を始めた。
今は多くの人たちが精霊の存在を忘れてしまっていること。彼らはずっと昔から今でも私たちの側にいてこの世界に住んでいること。みんなに精霊たちを思い出して仲良くなってほしいことを。
説明を終えるとリアナちゃんが、お疲れ様と私の頭を撫でてくれる。アキューちゃんも親指を立ててぐっじょぶと言ってくれた。
「というわけで、普段は見えてないけど精霊への感謝の気持ちを大事にしてほしいな。そうすれば精霊たちはこれからもみんなのことを守ってくれると思う!」
見えていないだろうけど、今も彼らはみんなの周りを嬉しそうに飛び回っているんだから。
おっととと、あんまり話し込んで休憩できない人がいるといけない。精霊の話はこの辺にして東門から新しい罠を持って行かなきゃ!
私たちは急いで鍋のフタ型トラップを運んだ。
雨の中で新しい罠を設置していく。一応雨具は身に着けてるけど、もう頭の先から足の先までびしょびしょだ。でも今はまだそんなことを気にしてる場合じゃないから気を引き締めないと!
両手でほっぺをパシパシ叩いて気合を入れていると、近くで次の作戦を練っているルミーアさんとダインさん、それに他の先輩たちの話し声が聞こえてきた。
「ここは貴方たちひとつ星に任せても良さそうね」
「はい、まだモンスターたちを食い止めてるA班とB班の加勢をお願いします」
「ああ、そうと決まれば急ぐぞルミーア。先陣を切ってる奴らが簡単にくたばるとは思わんが、のんびりしている暇はない」
A班とB班がいる方角を見つめる。
シャルちゃん大丈夫かな……?
私たちC班は無事に勝てたけどシャルちゃんたちは、私たちの安全のために今もまだ戦い続けてるんだ。
ルミーアさんとダインさんが加勢するための準備を始める。彼らが行ってしまえば、私はこのクエストが終わるまでここで待機。A班とB班が戻ってくるのを待っていることしかできない。
私が行っても邪魔になるだけだし、先輩冒険者のみんなにもシャルちゃんにも怒られるかもしれない。
でも……!
「あのっ、私も一緒に行きたいです!」
大声で言ってしまった!
この場にいる全員が驚いた表情で私を見つめる。
少しの間誰もが沈黙していたけど、先輩冒険者さんが首を横に振った。
「危険すぎる、ダメだ、許可できない」
「B班には私たちの仲間が、大切な友達がいるんです。邪魔になるようなことはしません、だからお願いします!」
うぬぬ、先輩冒険者さんがなかなか首を縦に振ってくれない……いやでも諦めないぞ!
それでもしつこくお願いしていると、私たちのやりとりを知ったリアナちゃんとアキューちゃんが駆けつけてきた。
「急に大声出したりしてどうしたんだココ?」
リアナちゃんの疑問を先輩冒険者さんがすぐに説明した。
「危険だからダメだと言ってるのに、この娘がB班の仲間の加勢に行くって聞かないんだ。お前たちからもなんとか言ってやってくれ」
私を見つめる2人に目で訴えかける。
お願い伝われ私の気持ち……!
リアナちゃんとアキューちゃんは、お互い目を合わせて頷いた。そして私の横に並んで一緒に頭を下げてくれた。
「この子は、うちのココはとても頑固です。今ここで先輩方の許しが得られなくても、きっと隙を見て強行突破します」
「……その時はわたし達も一緒」
「ですので、どうかココの、私達のわがままをお許し願います!」
「……リアナちゃ〜ん……アキューちゃ〜ん」
私の思いが伝わった!
後はなんとかお願いを聞いてもらえれば!
3人で懸命に頭を下げる。先輩冒険者さんたちはそれでも……と、許してくれなかったが、意外なところから私達への助け舟が出た!
「おぉん……仲間を思うその心、熱いじゃないかひとつ星! わかった俺がお前達を仲間のところへ連れて行ってやる! 良いなルミーア」
「ちょ、ダイン!? はぁ〜、なんかこっちのも火が付いたみたいだし。わかったわ、この子達は私達が面倒を見るわ」
うぉー、やったぁ!
ダインさんとルミーアさんの許可が降りた!
待っててねシャルちゃんすぐ行くからね!
リアナちゃんとアキューちゃん、それにダインさんも一緒になって盛り上がる。
そんな私達を見てルミーアさんは呆れながらも微笑んでいた。
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