第21話 旅立ち前に迫る試練
今日の冒険はお天気が雨で中止になった。だから今は冒険者ギルドの地下にある酒場で、ごはんを食べながら話し合いをしている。
「もぐもぐ……ほ、いうわへで、ほんほのわらひたひの」
「シャル飲み込め、まずは飲み込んでから話せ。何を言ってるかさっぱりわからん」
「……ごくん、だから、今後のあたしたちの活動についてだよー。ほらみんなちゃんと食べて、地図が広げられないでしょー」
地図を置く場所を確保するために、私たちは急いでテーブルの真ん中に鎮座している肉料理を食べる。
「まったく、もぐもぐ……こんなに注文ひたのはひゃるなんらからへきにんを持って……」
「リアナ何言ってるかわからないよ、ちゃんと口の中のものを飲み込んでから話してよねー」
シャルちゃんの反撃に、リアナちゃんは顔を真っ赤にして目だけで言いたかった言葉を訴えかけていた。相変わらずリアナちゃんの反応はかわいいなぁ!
みんなで大皿に乗った肉料理を食べ尽くして、テーブルの上の食器を酒場の人に持っていってもららう。その際にシャルちゃんがさりげなく、次の注文をしていたのを私は見逃さなかった。
広くなったテーブルにシャルちゃんが地図を広げる。それはいつも見ているレルエネッグ周辺の地図ではなく、もっと遠いところまで描かれた地図だった。
「今後の活動ってもしかして!」
「そういうことー。ココは察しがいいね」
みんな真っ直ぐな瞳で地図を見ていた。私も同じように地図に描かれた小さなレルエネッグを見つめる。
「今あたしたちはここレルエネッグにいるわけだけど、今後どこに向かって行きたいかみんなの意見を聞こうと思うんだー」
地図の中の世界はすごく広かった。
北にも南にも西にも東にもどこまでも世界が続いている!
どこが良いかな、どこへ行っても楽しそうだ!
「……最強の武器が作れそうなところ」
「アキューの目的はそれだからね。んー、そこを探すにはまず情報が必要だねー」
「情報収集となると、やはり王都が良いんじゃないか?」
「王都! 行ってみたい!」
地図の中の王都を探してみるが、どこにあるのかわからない。世界は広くたくさんの街があった。王都ってどんなところだろう、やっぱりすごく都会なんだろうなぁ!
「レルエネッグから王都だと進路は北側だねー」
シャルちゃんが地図の上の指を滑らせてひとつの街の上で止めた。
そこにはレイオール王国、王都ラティパックと書かれている。
「レルエネッグからだと結構距離があるが徒歩で行くのか?」
「さすがに徒歩だと大変だから馬車だねー」
王都まで馬車の旅。
もうその言葉だけでわくわくが止まらない!
いよいよ私たちはレルエネッグから世界に旅立つんだ!
「出発はいつにするの!?」
「ココ焦るなー、準備が必要だから10日後くらいはどうー?」
「ああ、良いんじゃないか」
「……わかった」
リアナちゃんとアキューちゃんが賛成して旅立ちは10日後くらいに決まった。10日後と言わずに明日にでも出発したい気分だよ!
でもシャルちゃんの言う通り焦っちゃダメだ。時間をかけてしっかり準備しないとだし、王都行きの馬車だって探さないといけないからね。
その後レルエネッグから王都ラティパックまでのルートを決めたりした。
いくつもあるルートから一番楽しそうなところを選んで、これからの話をどんどん進めた。
そして、さっきシャルちゃんがこっそり注文していた料理が運ばれてきた時にそれはやってきた。どたどたと音を立てて数人の冒険者が階段を降りてきて、大声で酒場にいる冒険者全員に呼びかける。
「おおい、みんな緊急クエストだ! 東の山を越えてモンスターたちが、レルエネッグに接近しているという情報が入った。動ける者はただちに1階に来てくれ!」
酒場にいる冒険者たちが次々に立ち上がり、みんな階段を駆け上がっていく。
「せっかくおいしそうな鶏料理がきたところだけど」
「食べてる余裕はなさそうねー」
「ああ、とにかく上で状況の確認をするぞ!」
「……らじゃー」
私たちも顔を見合わせて席を立った。
1階では数人の冒険者がギルド職員と話している。おそらくモンスターがレルエネッグに向かっているという情報を持ってきた人たちだ。その人たちとの話が終わると、冒険者ギルドの職員たちはすぐに私たちにも状況の説明を始めた。
「たった今入った情報によると接近中のモンスターの中には、大型モンスターや危険度の高いモンスターがいるそうです!」
大型モンスターと危険度の高いモンスター!
まだどんなのかわからないけど、大きいのが街に来たら家とか壊されそうだし、危険度の高いモンスターはその名の通り危険だし大変だ!
なんとかしてモンスターが街に来ないようにしないと!
「これから皆さんに今回の作戦をお伝えします! 今回の作戦では3つの班に分かれてモンスターの接近を阻止します! まず二つ星以上で大型との戦闘経験がある方はA班に、大型との戦闘経験がない方はB班で危険度の高いモンスターの相手を、最後にひとつ星の方のC班でレルエネッグ周辺の防御を固めます!」
役割が決められそれぞれの班に分かれる。
大型モンスターを担当するA班の人たちは、人数こそ少ないが経験豊富ですごく強そうだ。あの人たちならきっと大型モンスターをやっつけてくれるだろう!
B班の二つ星の冒険者は人数が多い。危険度の高いモンスターが相手でもきっと大丈夫だ。ただモンスターも数が多いらしいから、油断は禁物だと話し合っていた。シャルちゃんは二つ星の冒険者だからこの班で行動する。
残った私たちひとつ星冒険者のC班は、レルエネッグの衛兵さんと協力してB班が取りこぼしたモンスターから街を守るのが仕事だ!
「それじゃ、あたしはB班だから行くねー」
「シャルちゃんがんばってね!」
「みんなもね、じゃあまた後でー」
いつもの調子でシャルちゃんがB班の人たちと一緒に出発した。
B班を見送ると次はいよいよ私たちC班の番だ。
冒険者ギルドの外で点呼をとっていざ出発!
C班のみんなが緊張に顔を強張らせてレルエネッグ東門に向かう。
強い雨が降り続ける中、緊急クエスト『レルエネッグ防衛戦』は始まった。
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