第20話 いつもの日常の中で

 アキューちゃんがパーティに加わってから、いくつかのクエストを一緒にクリアした。やっぱり4人でする冒険は楽しく毎日が充実している。

 今もヨクアール森でのクエストを終えて、冒険者ギルドに戻ってきたところだ。


「はい、横跳びザリガニの討伐おつかれさまでした! こちらが今回の報酬になります、お受け取りください」

「やったー、ありがとうお姉さん!」


 冒険者ギルドのお姉さんからお金の入った袋を受け取る。

 それを4人で均等に分けてお財布に入れると、私たちの今日の冒険は終了だ。


「今回の報酬はいつもより多いな」

「数が多かったからねー、すこしおまけしてくれたのかもよー」

「……冒険者ギルド太っ腹」


 みんな今回の冒険でお小遣いが増えて大満足みたい。

 私は重くなったお財布をカバンに片付けて冒険者ギルドの見回す。

 夜だというのに多くの冒険者が楽しそうにここで話し合っていて、下の階からはいつも賑やかな声が絶えず続く。


「どうしたココ、何かあるのか?」

「ううん、なんでもないよ」


 リアナちゃんが心配そうに声をかけてくれた。

 でも本当に何でもないから私はいつものように笑顔で応えた。


「じゃあ今日はもう遅いしこれで解散だねー」

「……うん、みんなまたね」

「ああ、おやすみ。また明日な」

「みんなおつかれさま、またね!」


 冒険者ギルドの外に出てみんなと別れる。

 リアナちゃんとシャルちゃんは宿泊している宿屋さんへ、アキューちゃんはお家の武器屋さんへ向かって歩いて行く。


 みんなを見送ってから私は私の家への帰り道を進む。

 夜は静かだけれど夜でもレルエネッグは楽しいことがいっぱいだ。


 今日も風の精霊たちが、ふわふわと宙を泳いでいる。水路では水の精霊たちが、気持ちよさそうに水に浮いて、街頭の明かりが消えないように、火の精霊たちが一生懸命動き回り、土の精霊たちは虫たちと一緒に夜を楽しんでいる。


 いくつかの曲がり角を曲がって、階段を降り見慣れた家並みの道を歩く。

 冒険者ギルドからは少し遠い場所、そこに私の家がある。


「ただいまー!」


 玄関のドアを開けて中に入ると、お母さんが迎えに来てくれた。


「おかえりココ、今日も冒険してきた?」

「うん、みんなといっぱい楽しんできたよ!」

「そう、ふふ、よかったわね」


 居間にはお仕事から帰ってきてたお父さんが何かの本を読んでいた。


「ただいま!」

「ココおかえり、疲れてないかい?」

「うん、この通り元気いっぱいだよ!」


 ふんふん! とお父さんに元気をアピールすると、お父さんもお母さんも楽しそうに笑った。


「じゃあココも帰ってきたし食事にしましょう」

「私も手伝うよ」

「ありがとう、じゃあ手を洗ってからお皿を用意してね」

「うん!」


 水場で手を洗ったあと、戸棚から食器を取り出しテーブルに並べていく。

 私が並べた食器に、温め直したお母さんの料理が盛られる。

 おいしそうな匂いでおなかがぐぅ~っと鳴った。


「さぁ、お父さんを呼んできて」

「お父さんごはんの用意ができたよー!」


 居間にいるお父さんは本を静かに閉じてソファから立ち上がる。

 あれは新しい本なのかな、今度私も読ませてもらおう!


「いだたきます!」


 お母さんの料理を一口食べると幸せな味がした。

 おなかが減ってたのもあるけど、やっぱりお母さんの料理はおいしい!

 私もいつかはお母さんみたいに、おいしい料理を作れるようにがんばるぞ!


 ばくばくとおいしい料理を食べていく。

 お母さんはそんな私を見て微笑んでいた。


「ココ今日はどんな冒険をしてきたんだい」

「もぐもぐ……今日はヨクアール森の河原で、横跳びザリガニと激戦を繰り広げてきたよ!」

「横跳びザリガニか、手強そうな相手と戦ってきたんだね」

「うん、叩こうとしたら横にぴょーんって跳んで避けるんだよ。でも後ろには跳んだりしない変なザリガニだった!」


 リアナちゃんやアキューちゃんの活躍の話、シャルちゃんの食欲の話などたくさんのことを話した。お父さんもお母さんも、2人とも楽しそうに話を聞いてくれた。


 食事のあとはお母さんと一緒に後片付けをして、その後はのんびりお風呂タイム!

 温かいお湯が貼られたバスタブに浸かって1日の疲れを取る。

 この瞬間はまるで生き返るような気分になれるね。


 のんびり楽しんだお風呂を上がって着替えを済ませたら、お父さんとお母さんにおやすみの挨拶をして自分の部屋に入った。


 すぐにベッドに飛び込みたいけど、その前にやらなきゃいけないことがある。

 カバンからお財布を取り出し、机の上に置いてある貯金箱に今日のクエスト報酬の半分くらいのお金を入れた。


 貯金箱随分重くなったなぁ。

 両手で持って軽く振ると、中からじゃらじゃらとお金が擦れる音が聞こえた。

 貯金箱を元の位置に戻して私の今日のクエストは完了だ。


 ふああぁぁぁ。

 1日の最後のクエストを終えた途端に、あくびが出て眠くなってきた。

 あとはベッドに飛び込んでぐっすり寝るだけ。


 明かりを消してからもぞもぞとベッドに潜り込み目蓋を閉じる。

 真っ暗な夢と現実の間の世界でみんなのことを考えた。


 リアナちゃんはもう寝たかなぁ。

 シャルちゃんはまだ何か食べてそうだ。

 アキューちゃんは今頃鍛冶の勉強をしてそう。


 明日はみんなでどこにいこう?

 どんなクエストをしようかな?

 久しぶりに採集のクエストもいいなぁ。

 うんうん、みんなに相談してみよう。

 明日も明後日もずっとずっと、楽しんでいけるようにがんばるぞー!


 いろいろ考えていたらだんだんぼーっとしてきて、私の意識はそのまま深い所へと落ちていく。


 今日も楽しかったなぁ。

 また明日……おやすみなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る