第22話「妹ミッション」
一学期の終業式。それは一年で最も楽しみな日と言っても過言ではない。何故なら明日から夏休みだからだ。あと授業が午前中で終わりってのもポイントたかし。
しかし今日の俺は少し憂鬱が混じっていた。理由は妹から課されたミッションをこなさなければならないからだ。
お散歩にしてもマッサージにしても、今までは立花さんからの誘いで俺からアクションを起こすことは一度もなかった。
厳密に言えば今回も妹からの頼みではあるが、そこら辺は大目に見て欲しい。
ソワソワ、ソワソワ。
ソワソワ、ソワソワ。
くそ、どのタイミングで話しかけりゃいいんだ。や、やっぱメールにするか? 何も自分からハードモードで挑む必要はないだろう。いや……でもせっかく新から公認をもらったのにその手を活かさないのもなぁ。
「なにソワソワしてんだ?」
「よ、陽介ぇ……ヘルプミー」
「なんだなんだ」
「俺はある事情で立花さんをビービーキューに誘わねばならんのだ。しかしあの女子たち3人が談笑している中に飛び込むタイミングが分からん」
「いつでもいいんじゃね?」
「めっちゃ簡単に言うなおい」
「そしたら葉、夏休み中にプールでもいかね?」
「お、いいね。って今はそれどころじゃないんだが」
「んじゃ決まりな」
そう言って陽介は立花さんがいる女子グループに突撃して行った。
「ふふっ、それでね?──」
「話し中悪い、ちょっといいか?」
「何かな? 笹嶋くん」
「夏休み中にサッカー部のメンバーとクラスの男数名でプール行くんだけどさ、よかったらみんなも一緒に行かないか?」
真っ先に反応したのは
少しギャルっぽい見た目だが接しやすい性格から密かに男子人気が高いらしい。
「えー、どうしよっかなー。あいとゆずは?」
次に
立花さんがいなければこのクラスでナンバーワンであっただろうルックスの持ち主。サバサバした性格が特徴だが嫌味がなく、男女ともに交友関係が広い。
「私は行ってもいいよー。あいりは?」
そしてご本命の立花さん。
「んー、クラスの男の子は誰が来るの?」
「今んとこ佐原だけだな。あとは進藤あたり誘おうかと思ってるんだけど」
「行くっ!」
「あいとゆずが行くなら私もいいよ」
さ、さすが陽介。コミュ力たけぇ。一瞬にして女子3人をプールに誘いやがった。
嫌らしさが微塵もない素振りもいい。もしやあなたが生粋のナンパ師ですか?
立花さんも新が来るから食い気味に即答したよ。
俺が陽介に感心してると何やら手招きして俺を呼んでいる。まさか、このタイミングで行けと?
唐突過ぎて心の準備がまだできてないんですが。
く、こうなったら勢いで行くしかないか。俺は立花さんの前に近づいて声を掛けた。
「た、立花しゃん」
噛んだ。めっちゃ恥ずかしい。死にたい。
「ぷふっ、噛んだウケる」
大澤さん、笑わないでもらえます?
既に瀕死なので。さっき嫌味がないって言ったの撤回しちゃいますよ?
「明後日うちでバーベキューやるんだけどさ。妹が立花さんに会いたいって言ってるんだよ。よかったらどうかな?」
「会いたいのは美紀ちゃんだけ?」
「へ? うーん、立花さんはまだ母さんと父さんとは面識ないからなぁ」
「そう言うことじゃなくてね? 葉くんは、どうなのかなーって」
「俺? 俺は……」
なんだこれ、ドキドキするんだが。ただバーベキューに誘ってるだけなのに告白みたいになってるんですが。
「立花さんに来て欲しい……です」
「うん、なら行くね」
ぐふっ、なんだその笑顔。可愛い。
こうして陽介のヘルプもあってなんとか立花さんをバーベキューに誘うことに成功した。
ミッションコンプリート。
*****
今日は部活がないから、学校が終わってからハンバーガーショップで陽介たちと昼食を取ることになった。
立花さんや武田さんの料理も美味いけど、こういったジャンクフードってたまに無性に食いたくなるんだよな。
「陽介、今日は俺が奢っちゃる」
「お、マジか。サンキュー」
「葉さんごちになりまーす!」
「何も貢献してない文也はダメだ」
ちゃっかり便乗して奢りを受けようとしたのは
「ケチなこと言うなよー」
「何言ってるんだ。文也のバーガーセット980円は最低賃金1時間分の労働対価なんだぞ」
「絶妙にピンと来ない例えだな。そういえば葉はバイトとかしないのか? 俺らは部活でそれどころじゃないけどさ」
バイトか。せっかく高校生になったんだし社会経験も兼ねて一度はやってみたい。
「そうだな、やってみたい気持ちはあるかな。ただ夏休みを満喫したい気持ちの方が勝ってる」
「どうせ家にいてもゲームして自家発電して寝るくらいだろ?」
「馬鹿野郎。たまには筋トレもするぞ」
「否定はしないのな」
「ははは、葉らしいわ」
確かに家にいてもぐうたら過ごしそうだ。
あとでいい求人が出てないかちょろっと確認してみよ。
バイトするなら、タウソワーク。
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