最後のムラ④
よく考えれば分かることだった。よく考えなくたって分かることだった。そりゃそうか、と。想像力が欠落していた。店の休憩室が急激に狭くなってしまった。圧迫感が凄い。そりゃ、花瓶が100個もありゃぁ、なぁ。香りがさほど強くないのがせめてもの救いではあるが、それでもずっと休憩室にいると気持ち悪くなってしまう。虫とか花粉は大丈夫だろうな。どちらもあまり得意ではない。特に後者は仕事に影響を及ぼすからな。一方のラビは日々喜々として水をやっている。如雨露(じょうろ)を片手に行ったり来たり。もしも色が変わったら教えてくれと伝えると、
「え-!この花、色が変わるですか?すごいですね~。楽しみですね~。」
だそうだ。
それから1週間が経過した。そしてアラタヤードを訪れるパーティーが増えてきた。彼等のこれからの未来は決まっていて、まずはオリハルコンの獲得を目指す。ただし、アラタヤードに到着したばかりのパーティーにとって容易に手に入れられる代物ではない。村周辺の敵でさえも全滅の可能性が漂う強敵、曲者揃い。洞窟の最深部に眠るオリハルコンまで到底辿り着けないと痛感するだろう。そんな時に寄り縋(すが)るのは店売り最強の武器群だ。もちろん高価な品々。容易くは買えまい。戦闘を繰り返して経験値を溜めてレベルを上げる。同時にルナを貯めて武器を買い替えるのだ。
オリハルコンを入手できれば『オリハルコンの剣』を作成することが可能だ。その頃には、店売り最強装備に身を包む。加えて牢乎な袋を購入してアイテムの持てる数を増やすことが必須となる。勇者達にとっても俺にとっても。何が何でも絶対に買わせなくてはならない。
「新しい袋は絶対に購入しておいて下さい。魔王城には強力な装備品や特殊アイテムが眠っていると訊きます。装備品以外にもできるだけ沢山のアイテムをキープする為にも牢乎な袋は買ってておいて下さい。それが攻略の鍵となります。」
セールストークも完璧だろう。尤も、牢乎の袋が活躍するのはラストダンジョンに入ってからだがな。また、2回目のローグライク・ミーティングにも参加した。発注票を使った遣り取りでも十分だったが、せっかく店にまで誘いに来たから参加してやった。俺の計画に沿った道具を、頭に描いた魔王までの道のりを実現する為の特殊アイテムを複数作り出すことができた。あとは・・・
「如月さ~ん!やったです-!!お花の色が変わったです~。」
「お~、きれいな青じゃないか。ラビが頑張って水をやってくれたからだな。」
「もっともっとがんばるですっ。」
「そうだな。」
ラストダンジョンに挑む一行が増えていくことだろう。
【最後のムラ④ 終】
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