第7話 目標ゴブリン1000匹
「どうしてなんですか!」
この町のギルドからの追放を言い渡され、しばし呆然とした俺だったが、今更どうしようも無いと開き直って残りの三日で目標のゴブリン1000匹討伐だけでも達成しようと、いつものように受付のシャーリーの所へ向かった。
しかし、シャーリーに告げられたのは「あなたには依頼は出さないようにと言われまして」という無情の言葉だった。
あまりのことに思わず大きな声を上げた俺に、ギルド中の視線が突き刺さる。
その中にはあからさまに俺を見下すような目も少なくない。
「ごめん……なさい……」
彼女の苦渋に満ちた表情と、僅かに悔しさのにじんだ声に、俺はそれ以上何も言い返せず。
ただ、彼女だけは俺のことを馬鹿にせず心配してくれていることを感じられただけで心が少し救われた気持ちになった。
「いや、無理言ってごめん。結局悪いのは俺の方だ……シャーリーさんは何も悪くない」
それだけ言い残すとギルドを出た。
「あと83匹で目標達成だったのになぁ……あーっ悔しいっ!!」
ギルドの前でそんなことを叫んで地団駄を踏んでいるハンターの姿は余程目立ったのだろう。
道を歩く人たちはおかしな者を見るような、それでいて関わり合いを避けたいような表情で足早に通り過ぎていく。
「いや。きにしないでください。」
俺はそそくさとギルドの前から移動すると、近くの建物の壁にもたれかかって考える。
この町に滞在できるのもあと三日。
その間にこの町で世話になった人たちに別れの挨拶をしたり、長屋の解約をしたり――……
「あの犬とももうお別れってことだよな」
初めて会った時、死にかけてボロボロだった犬の姿が頭に浮かぶ。
幸いあれ以来、あの犬の怪我をしている姿は見ていない。
犬はいつも一人で家族も居なさそうだが、上手く森の中で一人暮らしているのだろう。
なんだかその姿がひとりぼっちの自分と重なって。
それで今までずっと世話をし続けてきた気がする。
「でも、あと三日でお別れか。その間にいろんなものを食わせてやらないとな」
どんな料理が良いかなと壁にもたれながら考える。
そして俺は昨日フェリスの店で買ったマヨソースと野菜のことを思い出した。
「そうだ。マヨソースを使って、村にいた頃隣りの婆さんが作ってくれたアレを作ってみよう」
作る料理が決まったら善は急げだ。
どうせこの町には別れの挨拶をする相手なんて数人程度。
大家さん、フェリスとその家族、そして俺の多分今までで一番仲良くなった友達――かもしれないギリウスくらいだ。
「というかギリウスは昨日夜勤だったはずだから、今日は遅番でまだ出てないだろうしな」
俺は三日間でやることを頭の中で考えながら、ギリウスの居ない町の門を抜ける。
そして
途中、数人のハンターや商人の馬車とすれ違ったが、ギルドを首になって、別の町に行くことが決まった以上配慮はもう必要ない。
全員が一体何が走り去ったのかと騒ぎ出す頃には、俺の姿は既に遙か遠く。
どうせ顔なんて認識されることも無いだろう。
少し街道を走り、目印にしていた岩から森の中へ飛び込む。
そして昨日、ゴブリンと邪魔をしてきた魔物を倒した後に食事をした広場にたどり着いた。
そこで俺は料理の臭いを
『わふんっ!』
昨日、俺が置いていった皿の横。
そこに茶色の毛の犬がちょこんと座り込んで、まるで俺が来るのがわかっていたかのように嬉しそうに尻尾を振って待っていたのである。
<<********作者からのお願いです********>>
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