第16話 夏と海の家②
芳香さんに部屋まで案内してもらった俺達は、休む間もなくバイトお揃いのパーカーに着替えて早速海の家に向かった。もちろんパーカーの下は水着だ。
夏川さんから休憩時間は各々海で遊んできても良いと言われてたんだよな。
宿泊代、食事代込みのバイトで休憩時間は海でも遊べる。
忙しいとは聞いてるけど夏を満喫できそうなバイトだ。
バイト先となる海の家は民宿からは徒歩数分の距離だ。
先程車で通った道を歩いて海岸沿いの道路に出ると綺麗な砂浜と海の家が見えた。
店内を覗きこむとオープン前の時間ということもあり、露と天野が開店準備を行っていた。
「あ~やっと来た~。遅いよ健君、楓ちゃん」
「まったくだ。バイトに誘っておいて一番最後に来るとは。。。」
「悪かった。露、天野」
「ごめんねぇ。遅れた分頑張るから!」
ほんと、遅れた分頑張らないと後で何を言われるか。。。
そう思いながら店内を見渡す。
海の家と言ってたから仮作りの建物を創造していたけど結構しっかりした作りだ。それに厨房もイートインのスペースも広くて店内も解放感があるし、ウッドデッキのテラス席にシャワー室やロッカールームまであるみたいだ。
「海の家だけで使うの勿体ない感じだな」
「うん。素敵なお店だよね」
楓も同じ感想みたいだ。
でも、海辺だし海水浴シーズンしか人が来ないのかな。
「そういえば露。夏川さんや藤原達は?」
「あ、夏川さん達なら食材の買い出しに行ってるよ。そろそろ帰ってくる頃だと思うけど」
「そっか。ところで2人ともバイトはどうだ?結構忙しいのか?」
露は結構な人見知り系だしバイト紹介した側としても気になってたんだよな。
それに俺達もこの後働くわけだし。
「うん。午前中はそうでもないけどお昼近くから家族連れとか結構来るから結構忙しいよ」
「接客とか大丈夫か?」
「う~ん。最初のうちは緊張しちゃって上手く出来なかったけど夏川さん達がフォローしてくれたし、多分もう大丈夫・・・かな。それに・・・」
「それに?」
「天野君も一緒に居るから♪」
「はいはい。ご馳走様」
顔を赤くして照れながら言う露。
心配して損したよ。。。
それに聞いてる俺が恥ずかしくなってきた。
まぁ楽しくやってるみたいだし良かったのかな。
ちなみに天野も俺達同様に普段からバイトはしているけど、"露と一緒に海に行ける"ということでこちらのバイトを優先してシフトを組んでもらったらしい。
あいつが決めたんだし俺としても露を大切にしてくれるのは悪い気はしないけど・・・いいのかそれで?
夏川さん達は外出ということで俺と楓も露と天野に教えてもらいながら開店準備を手伝うことにした。
もっとも簡単な掃除だけなので露達だけでも大丈夫そうだったんだけど何だか手持ち無沙汰でね。
しばらく雑談しながら掃除を行っていると買い出しに行っていた藤原達が戻ってきた。
「お、田辺に小早川さん!ようやく到着か」
「小早川さん!!」
「いらっしゃい2人とも」
大きな袋を抱えた藤原と森田さん、夏川さん。それに女性がもう1人。
日焼けした肌に茶髪のロングヘアを後ろで束ねた美人さん。
海とかサーフボードとか似合いそうな女性だ。
この人も夏川さんの親戚かな?
「あ、2人が田辺君と小早川さんね。私は春川風香です。
もう会ったかもしれないけど民宿のオーナーしてる芳香の妹で私も夏の間はここでバイトリーダーしてるのよ」
「そうなんですね。よろしくお願いします。田辺 健吾です。」
「私は小早川 楓です。よろしくお願いします」
「ふふ。こちらこそよろしくね。一応普段は都内の大学に通ってるの。
歳も近いし何かあったら遠慮なく声掛けてね♪」
「「はい」」
何だか気さくで話しやすそうな人だな。
芳香さんは落ち着いた感じの女性だったけど風香さんは年が近いからかもしれないけど何だか元気で自由そうな感じだ。
「良かったね。話しやすそうな人で」
「そうだな。1週間とは言えお世話になるんだもんな」
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「田辺君。焼きそば定食を1番テーブルね」
「はい!!」
「小早川さんカレーセット2つを4番テーブルへ」
「わかりました!!」
うん。聞いていた通りというか結構忙しいぞこれ。
午前中は露や藤原達と雑談したり適当に休憩入れたりとノンビリ過ごしていたけど昼近くなってきた辺りから店内が混雑し始めテイクアウト含めかなり忙しい状況となった。
厨房では調理師免許も持っているという風香さんが森田さんと露を従え料理を作り俺と楓、それに天野は店内フロア、藤原と横田はテイクアウト用のカウンターで忙しい時間を過ごした。
ちなみに夏川さんはフロアとカウンターをチェックしながら適宜手伝いをしている感じだ。
喫茶店ラウムのバイトとはまた違った忙しさだけど見知った友人とのこうやってばいとするのも悪くないよな。
バスケじゃないけどチームワーク的なのも感じられるし。
「ふぅ~。忙しいとは聞いていたけど凄い人気だねこの店」
「だよな。他にも海の家あるのにこの店だけ混み方が異常だな」
「ふふ。風香姉の料理も人気の理由なのよ。調理系の学校にも大学と並行して通ってるし、バイト先も都内のレストランだから腕前は確かよ」
「へぇ。俺も後で頂こうかな」
店内の混雑も一段落したところで楓と話をしていると夏川さんが人気の秘密を教えてくれた。
確かに海の家って簡単な料理とかが多いけど、風香さんの料理は味付けとかこだわってそうだもんな。
さっきも買い出しでスパイスとか結構買ってたもんな。
お店も綺麗だし人気があるのも納得だ。
「唯香~。煽ててもバイト代は変わらないわよ♪」
「あ、風香姉さん。本心だよ。風香姉あってのこのお店でしょ♪」
「もぅ上手いんだからな唯香は。
あ、田辺君、小早川さん。お疲れ様。
昼はいつもこんな感じなのよ。初日から疲れたでしょ?」
「はい。でも忙しいとは聞いてましたので」
「そう。ならいいけど無理はしないでね。
後、お客さんも少し落ち着いてきたから、そろそろ休憩入っていいわよ」
「「はい。ありがとうございます!」」
恋人たちの四重奏 ひろきち @hiro_1974
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