第9話 専属マネージャー? -藤原 和志視点-

「・・・君。朝だよ」

「・・・」


誰だよ・・・まだ眠いんだよ。

昨日は、田辺と遅い時間までオンラインゲームをしていたので正直眠い。

っていうか寝たのは明け方だ・・・田辺の奴自分が勝つまで止めないんだもんな。本当負けず嫌いというか・・・


とにかくもう少し寝させてくれと毛布の中に潜り込もうとしたところ、突然その毛布が奪い取られた。


「え?何?毛布?」

「もぉ~。か~ず~くん。寝ぼけてないで起きなさい!!」

「・・・って?由紀?何で?ここ俺の部屋だけど?」


うん。間違いないここは俺の部屋だし、昨日の夜は由紀も居なかったはず。

一昨日は・・・妹も両親も外出で帰りも遅かったし・・・。


「なんでじゃないでしょ!今日から一緒にランニングするんでしょ!

 おばさんに聞いたらまだ寝てるって言うから起こしに来たのよ」

「ランニング?」


ランニング・・・そういえばこの間のバスケ部の飲み会(もちろん俺はノンアルだったけど)で田辺と小早川さんが毎朝走ってるって聞いて・・・俺も走ろうかなって言って・・・そうしたら由紀が"じゃあ私も一緒に"って・・・あれ?何でバスケ部の飲み会に由紀が居たんだっけ?


「まだ寝ぼけてるぅ~ 私は和君専属のマネージャーなんだからね。雫さんやおばさんにも頼まれてるんだから♪」

「専属マネージャー・・・・?」



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


「和君はこの後バスケ部の歓迎会だよね?」

「あぁ帰り遅くなるかもな」

「うん。私も琴香達と食事してくから」

「そっか楽しんで来いよな」

「ありがと♡じゃまた後でね」


川野辺大学に入り約1か月。

授業や周りの環境にも慣れてきたし気軽に話が出来る友達も出来てきた。

まぁ旧知の田辺達と一緒に居ることが一番多いことに変わりはないけどね。

そして、由紀。

俺が言うのも惚気に聞こえてしまうかもしれないけど、大学に入ってますます可愛くなった。

いや正確には綺麗になったと言った方が良いんだろうか。

今までも十分に可愛かったけど、それに大人っぽさというか色気というか・・・まぁ彼氏補正が結構入っているのは否めないけど、とにかく本当に最近の由紀は一緒に居てもドキッとすることがあるくらいに綺麗になったと思う。


でも由紀が綺麗になるのは嬉しいけど周りの目がなぁ~

この間も告白されちゃったとか言ってたし。。。

もちろん由紀の事は信用してるけど・・・ちょっと心配だ。


「よっ藤原。どうかしたのか真剣な顔して?」

「田辺か。いや何でもない。それより田辺も行くだろ?歓迎会」

「もちろん♪酒なまだ飲めないけど食事も美味しいらしいしな」

「そりゃいいな。そういえば今日は小早川さんや露ちゃんは一緒じゃないのか?」


最近はいつも3人1組な感じだったから田辺1人ってのは珍しい。


「楓と露は雫姉の手伝いで先にお店に行ってるよ」

「なるほど。雫先輩に頼まれたら断れないよな。。。」

「まぁな。でも2人共雫姉の信者だから、むしろ喜んで出掛けて行ったぜ♪」

「はは。そうなんだ。でも2人が居ないと田辺も寂しいだろ」

「まぁ確かにな。でもたまには静かでいいぜ」

「うん。後で小早川さんに教えてやろう。早く店行こうぜ♪」

「お おい藤原」


大学を出て国道沿いに少し歩くと今日の会場となる居酒屋だ。

大学近辺はあまりお店は無いんだけど国道沿いにはチェーン店系のレストランや家電量販店等が立ち並んでいる。

そして、お目当ての居酒屋はチェーン店が立ち並ぶ中で頑張っている地元のお店。


「健吾君!藤原君!入り口こっちだよ!」

「あ、田辺。あっちに小早川さんが居るぜ」

「だな。もう先輩達も来てるのかな?」

「かもしれないな」


だとしたら急がなきゃな。俺達1年だし先輩より遅くってのはマズいよな。

と少し早歩きでお店の入り口に行くと小早川さんが受付をしていた。

なるほど手伝いってこういうことか。


「楓。先輩達ももう来てるのか?」

「まだあんまり。さっき恩田先輩と小宮先輩が来たくらいかな。

 亮兄と雫姉は張り切って随分前から来てるけどね♪

 2人共飲み会とか大好きだから」

「まぁあの2人は飲めれば・・・」

「そうなんだ牧村先輩はともかく雫先輩も結構飲みむんだ」

「あぁ絡まれないように注意な」

「あ あぁ気を付けるよ」


その後、歓迎会開始の時間が近くなると先輩方や新入部員も徐々に集まりはじめ。時間通りに開催となった。ちなみにお店は貸切だ。

1年生は田辺や小早川さんの他にも倉北の天野や石森といった高校時代のライバル達も居た。

高校時代はいろいろ苦しめられたけどチームメイトになると思うと頼もしいな。

それに尊敬する森下時代お世話になった豊田先輩や本橋先輩や津川先輩も居る。

何だか先輩達とまたバスケが出来ると思うと今から楽しみだ。


「豊田先輩またよろしくお願いします!」

「おぅ期待してるぜ。今年は各高校のエース級が結構集まってるからなライバルは多いけど頑張れよ!」

「はい!」


俺や田辺をはじめ新入部員が先輩達にお酒を注ぎながら挨拶をしていると上座の方に雫先輩が立ちマイクを持った。


「は~い。みんな注目!雫のお姉さんが話しますよ~」

「「は~い」」


田辺が言った通りだな・・・雫先輩結構酔ってるな。

それに先輩達も酔っ払ってるみたいだけど皆一斉に雫先輩に注目してる。

やっぱりあの人凄いな。


「え~ 新入部員の皆さん。バスケ部に入っていただきありがとうございます。

 これからビシバシ鍛えてきますんで受験で鈍った体に鞭打って頑張ってください!遠慮はしないからね!」


・・・確かに練習見たけど結構きつそうだったよな。


「でも・・・きついだけじゃなくてみんな。特に男子部員に朗報があります!!」

「「え~何々雫先輩~」」


にしてもこのノリ・・・これが大学生の飲み会のノリなのか?

等と思いながら先輩達のところを周っていると


「今年は可愛い女子マネが3人も入ります!喜べ男子諸君!」

「「おおおお!!」」

「ということでこっち来て長谷川さん、渡辺さん、森田さん」

「「はい♪」」


ん?長谷川、渡辺、森田?

偶然か?何だか聞いたことある名字だな。


「え~と。長谷川 秀美です。こういうの初めてなんですが頑張りますのでよろしくお願いします」

「渡辺 琴香です。私も初めてですがルールとかは勉強してきました!頑張ります!」

「森田 由紀です。運動苦手なんですが頑張りますのでよろしくお願いします!」

「「かっわいい~」」


って由紀じゃん!由紀がマネージャ?

それに長谷川さんと渡辺さんも何で?

3人で食事してくるんじゃ???


俺が呆けていると雫先輩が由紀を連れて俺の前へとやってきた。

何だかまだ状況が整理できない。


「驚いたみたいね。藤原君」

「そ そりゃ驚きますよ先輩。だってここ来る前に由紀は友達とご飯食べて帰るって・・・」

「ふふん。サプライズだったからね♪和君を驚かせたくて」

「お 驚いたよ」


うん。普通に驚いたよ。


「じゃ大成功だね」

「いつ決めたんだマネージャーやるって」

「受験の前かな。大学に入れたらマネージャになって和君を支えたいなって。

 だから受験勉強の合間とかに夏川さんや恵ちゃんにもルールとか教えてもらってたんだよ。あ、琴香達は話をしたら一緒にやりたいって話になって」

「そ そうなんだ」


そんな前から。

それに受験勉強だけでも大変なのにその合間にって。


「じゃ。森田さん。あなたに1つ仕事を依頼します」

「仕事ですか?」

「そう。藤原君の体調管理とか諸々をお願いしますね」

「「え??」」


体調管理はわからなくもないけど・・・部員のじゃなくて俺の?

由紀も驚いてるから聞いてなかったのか?


「健吾から話は聞いてるわ。あなた達も中々のバカップルだそうね」

「「バ バカップル??」」


って田辺の奴、雫先輩に俺達の事を何て説明してるんだ?

それにお前らに言われたくないぞ!


「そう言うことだから森田さんは、差し詰め藤原君の専属マネージャってところね。あ、もちろん部の仕事もしてもらうけど。嫌かしら?」

「そ そんなことありません!!ありがとうございます。頑張ります!!」

「よろしい!!じゃ後は適当に楽しんでね♪ 亮く~ん」


そう言いながら雫先輩は近くに置いてあったジョッキを持って牧村先輩のところへ行ってしまった。





*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


専属マネージャーって確かに言ってたな。

でもあれって酔った勢いで言ってたんじゃないのか・・・

それにランニングするってのも確か田辺達が毎朝走ってるって話を聞いて"いいねぇ"って話してただけの気も・・・。


でも由紀のやつ本気だよな。

珍しくトレーニングウェアとか着てるし、今更その場の雰囲気で言いましたとは言えないよな。


・・・やるか。


「よし。じゃ走るか!」

「うん♪」


その後、軽く準備運動をした後、近くの川沿いを走った。

朝早い時間の川沿いの道。

何だか気持ちいい・・・んだけど当然の如く由紀は途中でバテた。

まぁ由紀って基本運動苦手だったもんな(よく一緒に走るって言ったよな)

明日から由紀は自転車かな。



****************

回想シーンの歓迎会は、時系列的には4話の少し前くらいの話です。

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