3 すてーたす、おーぷん???
まるで子供たちに引き寄せられるように、それからも僅かな間に次々とモンスターが襲いかかってきた。
最初は5人だけが椅子を投げていたけど、徐々に戦闘に加わる児童が増えていって、現場はちょっとカオスになってきた。
単純に言うと、陣形が悪い。一直線に並んで椅子を投げるのは、相手が細かくて大群の時にはいいけども、単体の大きな敵に対しては端っこの方が投げにくい。
「先生、やっぱり
目を輝かせて地面に木の枝でV字を書いて見せたのは
「あー……なるほど」
そうか、この子歴史系が好きなのか。道理で
私の「なるほど」は一翔くんの趣味嗜好を理解したぞという意味だったんだけど、あちらは鶴翼の陣の提案に対しての返事だと思ったらしい。実に楽しそうに地面に様々な図形を描き始めた。
「鶴翼陣は敵を包囲する守りの陣なんです。僕たちは待ち受けて戦うから、こういう陣形がいいと思います」
「一翔くん凄いねえー! で、好きな武将は誰?」
「上杉謙信と、毛利元就と、三国志だとやっぱり諸葛孔明が好きです!」
きた。きたわこれ。
諸葛亮孔明とか間違った言い方じゃなくて「諸葛孔明」って言った。これはガチだわ。あと、上杉謙信と毛利元就ってところがまたガチだ。
「三国志も読んだの?」
「横山光輝の三国志はうちに全部あるので」
ああー、親の趣味が子供に著しく影響したパターン……。
私は地面に描かれたVの字を見つめて考えた。
確かに、これなら無駄がない。現状必要ないけども、一発当てた時点でモンスターは煙幕の中で動きが取れなくなってるみたいなので、一度の椅子投げで仕留めきれなかった場合、包囲して全方向からの椅子乱舞が出来る。
「そうだね、敵が少ないときはこれで、数が多いときは今までみたいに横並びにしたらいいね」
「
うわぁー。嬉しそうー。もはや何言ってるのかわからない!
「椅子を何度も投げたことはないから、どの程度次投げられるまでに時間が掛かるかわからないんだよね。……そうだ、一翔くん、ちょっと試してもらえるかな? 椅子召喚から次の椅子召喚にどのくらい時間を空けないといけないかを。知ってないと危ないからね」
「わかりました。じゃあ、椅子召喚!」
一翔くんは適当に椅子をぽいっと投げると、即座に「椅子召喚」と唱えた。その手には次の椅子が現れて、先に投げた方は消えている。
おおお……クールタイム無しで連投できるんだ……なんだこの性能。
「あまり距離は出せないけど、連打できるのは強いねえ」
「三段撃ちより強そうですね……あ、そうだ。距離っていうか、なんか椅子がちょっと軽くなった気がします」
「そうなの? ちょっと他の子に訊いてみよう。おーい、みんなー、集合ー!」
私が声を掛けると、その辺で遊んでいた子供たちがわらわらと集まってくる。
「先生、なーに?」
「どうしたの?」
口々に尋ねられて、私は真剣な表情で子供たちに問いかけた。
「一翔くんがね、椅子が軽くなったって言ってたの。先生は椅子が出ないからわからないんだけど、みんなはどう?」
「あっ、そうなの、軽くなった!」
「多分本気で投げたら、もっと飛ばせると思う!」
その場の全員の子が、椅子が軽くなったことに同意した――どういう事だろう。
私が頭を悩ませていると、ぽつりと謎の言葉が子供たちの間から聞こえてきた、
「ステータスオープン。わあっ!!」
声の主は
「先生! ステータスオープンって言うとね、ステータスが見られる! 私、今レベル12だって!」
「なんですと!?」
「異世界転移のお話だとね、だいたいステータス見られるの。だからやってみたの」
「うわー、本当だ、すげー!!」
ステータスオープンを試した子供たちの歓声がその場に溢れかえった……。
ステータスオープンと唱えると現れるのは、不自然に宙に浮いた乳白色の板。
そこには自分の名前やレベル、各ステータスなどが書かれていた。ゲームなどでありがちなアルファベット三文字の略語だけど、ゲーマーの私には意味がわかる。これはちゃんと説明しないといけないな。
ステータス確認祭りが一段落ついて、教えてもらった心愛ちゃんと友仁くんのステータスはこんなだった。
LV 12
HP 72
STR 22
VIT 21
AGI 26
DEX 27
スキル:椅子召喚
LV 12
HP 90
STR 35
VIT 27
AGI 18
DEX 17
スキル:椅子召喚
これに対して
LV 12
HP 48
STR 13
VIT 13
AGI 13
DEX 13
スキル:指揮 LV1、指導 LV1
なんなんだ、この差はー!?
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