#17 自分もやってみたら思いの外やばい展開になるけどしょうがないよね


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俺は3番目のトーナメント枠、控室で絡んできた蜥蜴の獣人アリソンが初戦の相手となった。


大会参加者は、抽選後は用意された個室に案内される。

それは、外との関係を断つと同時に公平に身辺警護を行う為でもあった。大会参加者には部屋をあてがわれる目的を始め、仔細な説明を受け案内される。


コロシアム内の施設にしては上等な部屋でもあって。学園内にあった統合コロッセオに似た造りを思い出す。


用事の際は、呼び鈴を鳴らせば来るそうで。武具の手入れと機材の一式を取り揃えてもらった頃は日が暮れていた。


俺は室内の湯船で身を沈めて考えことをしていた。


念話魔法・・・俺は奴との対話で違和感・・・あの声が気になって仕方が無かった。物は試しと言いながら、わざわざ俺に仕掛ける事に理解に苦しむ・・・。


「・・・」


それと同時に試験的に念話魔法を使ってみる事にした・・・相手は強力な魔脈を持つ人物が安定するだろう・・・それを考えれば一人しかいなかった・・・。


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流石に不躾だと思いながらもミスティアの魔脈感知してみる・・・流石に魔眼持ちの魔脈は掴みやすい・・・知っている人物の波長の中でもミスティアは特に色濃い。


徐々に接点を持ち、念話越しで囁く様に話す。


『ええ・・・レージさん?!・・・これ・・精神干渉?!』


流石魔法特化に秀でた才女、理解が早い・・・。


『驚かせて御免・・・ちょっとな・・・開会式で相手側から・・同じ手をやられてな・・・』

『やられた・・?どういうことですか・・・?』


俺は端的に黒騎士と名乗るものとの念話魔法の一件を話すと、珍しく彼女は考え込んだ。ジーベル絡みだからだろう・・・。


『魔脈に干渉する魔法の中でも回復以外でも使われる初歩の初歩・・・と言われますが・・・その手順は直接的な手段以外は・・・知られる事は先ずない筈です・・・それを先手打たれたっていうことは・・・』


『ああ・・・ジーベル絡み・・・ハンスと言った連中と同じ連中の下っ端って思ったんだが・・・やっこさんは海派のエンブレムを持ってたな・・・。』


ジーベルと聞いて、沈黙する・・・反応としてはおかしい。政治事に疎い彼女だが、妙に反応が鈍い。やっぱりトラウマを引きづっているのだろう・・・。


『気分悪いよね・・・やめようか?』


『いえ!!やめないでください!!・・・失礼ですけど・・・今・・・お風呂ですか・・・・?』


ん・・・?なんだ?何でわかる、とりあえずイエスと答える。念話の思念越し・・・要は彼女のチャポンと言う環境音が明白に届いていた・・・。


『あ・・・』


思わず驚きの短い声を上げ、生唾を飲んだ・・・マジか・・・。それを察した彼女が念話越しから驚きの言葉を発する。


『ネ・・念話魔法の双方の魔力を・・・その・・・上げてみませんか・・・こういう・・・実験・・そう実験です・・・』


『魔力を・・・上げる・・・』


『そうです・・・その洗脳魔法とは違って・・・双方の干渉する相互干渉でして・・・昔よくやられたんですが・・・』


ミスティアがそう言いながら精神相互干渉、洗脳魔法とは違う精神対話による疑似体験だと言う。


お互い無意識の内に魔力を上げていた所為もあって、目の前が白乳色の様に真っ白になった。


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『?!?』


お互い向き合っていた、しかも同じ湯船の中に入っている。眼前に向き合う魔性の魔法使いの少女が生まれた姿のままで湯船につかっていた。


湯船で濡れそぼった肌に、しっとりとした艶やかな髪色。か細い肩にタップリと丸く垂れたバストが映えていた。下腹部から安産染みたお尻、伸びた両足は幾分青臭さが抜けた様な二次性徴を垣間見で俺の足と絡んでいた。



『おわぁ!!』

『あぁ!!』


お互いの人肌が心地良く、足の絡みあいに驚く。


『これが・・・精神交渉・・・か・・・』

『そうみたい・・です・・・ね・・・レージさん・・・此処までクリアーな状況は初めてです・・・。』


白亜の空間と言うよりカーテンで囲った密閉感に向き合った。こういう状況にどう理解すればいいか迷走する中、ミスティアが考えを絞り出すように言葉を吐いた。


『私が実際・・・経験した洗脳魔法はその・・・ぼんやりとしたので・・・』

『ぼんやり・・・?』

『はい・・・その・・・ジーベル本人の・・・能力が低かった可能性が・・・』


しどろもどろの言葉使いをしながら説明を続け、手の指でそれを表現する。それはうねうねとした表現だった。


『洗脳や魅了の魔法を始めとした・・・過去の実験の経験なんですが・・・ここまでハッキリとしたイメージは・・・初めてで驚きました・・・』


要は疑似体験・・・精神内面の致命的なイメージを植え・・・その負い目を追い込んでいく。言葉にして改めてると、無神経な自分が申し訳ない事をしたと痛感するもミスティアは上ずらせる。


『大丈夫です!!・・私はこういう経験はた・・たくさんしました・・・いやな事ですが・・・でも・・』


『?!・・・ウン?わかってる・・・知ってる・・口に出さなくていいよ?!無理しなくていいよ?!』


『でも・・・レージさんとのこういう・・・その・・・此処までハッキリとした精神交渉が出来るとは思わなくて・・・つい・・・思わず・・こういう形で・・わ・・ワザと・・誘い込んでしまいました・・・』


誘いこんだ?・・ワザとって堂々とまた・・・なんでまた・・・。


『私は・・・もう・・だ・・大丈夫ですから・・・こういうのもレージさん相手なら平気です・・・そ・・それに・・こういうのは・・嫌いじゃないので・・ええ・・』


自分に言い聞かせるミスティアの言い方に、お・・おう・・と言いたかった。がこの魔性の娘は凄いブレがある・・・と直感した。もし前世なら平気で「ホテルに行きませんか!!」って言いそうな娘だ・・・。


・・・まさかな・・・・


『と・・ともかく・・・その黒騎士は・・ひょっとしたら・・・認識を誤魔化す魔法があるかもしれません・・・。』


ミスティアの見解は、感覚をブレさせる魔法具による働きではないかと言う。


黒騎士の存在を含めて二国の国交問題に胡乱な影がちらついて仕方が無かった・・・。

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