#1 自分の身分を弁えないとエライ命令を受けてしまうよね


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獣人っていうのは元々、気難しい。

っていうか、ものの見事にすんごい縦ロールのヴィラに睨まれる。


事の発端は、例のミーティング時に関わる事なのだが・・・。夏季長期


「獣人国家はまだ未開・・・サーヴェランス援助の元とは言え・・・属国へとしての強制・・・いえ・・・」


ヴィラは何か思い出したかの様に独り言を始める。それを余所目に俺はネイアと話を始める。


「獣人国家・・・えぇ・・っと・・・」


「正確には・・・・獣人諸島国家『ヴォルガング』です、元々獣人達が多く原始的に近い生活をしていたのですが・・・サーヴェランスと一緒に文明化を受け入れ始めた国です・・・」


その内容を記した上質な紙の書類に。サーヴェランスとヴォルガングの各紋章が印刷されている。

ネイア姫が手にしている御大層な紙を後ろから俺は覗く。


「しかし・・・国家レベルの事案じゃぁーねぇのか・・・これ・・・」


「間違いなく、一クラン・・・いいえ。同盟学園として斡旋出来る範疇を超えています・・・おそらくは・・・。」


「フツーに考えようにも、今までの経緯がおっそろしい程にハイレベルだったじゃん。」


ハルーラはさらっとネイア姫の言葉をフォローする。

肝心な内容それは・・・。


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余りにも内容として率直過ぎた。

ネイア姫がマジマジと文書を読み上げる。


「ヴォルガング国家内部への介入し、尚且つサーヴェランスとの連携を取り持つように使者として出向く。内容は伝書を後日受け渡し、受け取った後はすぐさまにヴォルガングへと赴いて。獣人国家元首へ届ける様、そして・・・」



「そして、戦力供給並びに同盟条約の付け足し並びに承諾の返事を貰う交渉と・・・。」


俺が続けて読み上げる・・・明らかに一介の騎士では重すぎる内容だ。

それを聞き入ったダルダが震えがっている。庶民様はこの様な上級階級の大事の一端なんて対岸の火事と思われていた様ですな・・・。


「コレ絶対、ネイア姫やヴィラ様を頼っているだス・・・」

「ええ・・・ネージュ様の直系・・・金狼貴族の直系が二人も居ますし・・・それに・・・」


ミスティアが俺をじっと見る。


「え?俺??何?」


ミスティア、ネイア姫、ヴィラ、ハルーラ、ダルダの五人がじっとりと俺を見る。


「な・・何だよ・・・俺は・・・大丈夫・・・と・・おもう・・・」


的外れな回答をする。

そんな言い訳する俺に女子衆共が井戸端会議の如く、集まり始めてぼっそりと始める・・・。俺はそそくさと自分の席へ逃げる。


「・・・いやぁ・・・庶民の私でもレージさんは規格外って分かるッス・・・。」

「レージ様・・・ひょっとして自覚していないのでしょうか・・・?」

「あの男が隠れた逸材と自覚していないのでしょう・・・」

「世間知らずであれだけの事をやらかして、何で世間が放っているか・・・分かってなさそうだし・・・。」


「元々あの人の基準って・・・滅茶苦茶ズレていますから・・・先輩程の才覚が今まで知らなかったのも異常というか・・・本当今までどこでナニをしていたんでしょうか・・・?」


ミスティアの『ナニ』というセリフ酷く卑猥に聞こえる・・・。そう脳内で思ったら。ヴィラの犬耳がピクリと震え、ハルーラがチラ見する。


規格外かぁ・・・


そう言うのを前世でちょろっと・・・そーゆー異世界モノを読んでいたが、まさか自分がこうなるとは露ほどにも思っていなかった。


しかし・・・俺は腰の魔剣に目を配る。

あの白昼夢が何なのか・・・思い出すのにも妙に意識が白濁としていた。


-6-


俺は基本的に、戦技の中でも属性を剣に帯びさせて戦う方法は実はできないのだ・・・。


魔法の属性自体を外生的魔法で放出は出来るが・・『魔剣』に介して外生的魔法を維持する方法が出来ない。


れっきとした理由があった、無属性の安定度が異常に高い事だ。


それ故に炎にも氷にも雷にも、放出の際に形状化というプロセスを介す事ができるが。『魔剣』への放出には魔剣を介した先でなければならない、不安定な者の方が安定しやすい。


それは俺の親父がそうだった、それでも魔法のコントロールに魔剣の補正を逆手にとって利用し。四神源流の基礎にしたと言う・・・。


あの・・ジョーの一戦で起こった白昼夢は、突発的に出来た事。そしてそれを『魔剣』の方から俺に何かを伝播したのだ。


何がどのように・・・そして、どうやって俺の意識に介入できたか・・・。



ゆっくり背もたれに圧し掛かる。


バユンと豊かそうで、甘く女性的な匂いがふわりと鼻孔を刺激する。この世界の女性は、香水などをつけない。

風呂や石鹸、洗濯の洗剤、香料の類を原料を生産しているのは、他ならないヴォルガングから輸入されている。

精製方法などをサーヴェランスの錬金術師達が確約した後に、生活への浸透は瞬く間に広がった。


その手腕で一躍トップに躍り出たのが『ドーニンドー商会』。その創設者オマリーさんなのである。


この鼻をくすぐる、香料は『バーヤンミィー』というちょっと大人の人が香水としてつける。


「バーヤンミィーの石鹸かぁ・・・コイツはお値打ちで女性人気でも・・・・」


俺ははっとなる・・・このふっくらした上質な肌触り・・・ミスティアの様な舐る肉質ではない・・・。


「うぉぉお?!!ネイア姫ぇ?なんかゴメン・・じゃなくって・・スイマセン・・・」


振り返ると、顔真っ赤で驚き。目を見開くネイア様のお顔。

マジでアイドルだわ・・・。


「あ・・いえ・・その・・はい・・・だ・・大丈夫です・・・」


部屋にクシュリナ教官シャクル講師、シャラハ講師の三人がいつの間にか現れて教壇に立った。

考え込んでいた俺が我に返るまで待っていたのだ。

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