終章 続、終わったけど招かざる者が現れたんだけどさ。


-49-


「ゲロロック!」


ジョーを筆頭に、ハルーラ、ダルダ、カリス、ゼフィーは絶句した。

それは見慣れたカエルが等身大で着衣姿で宙に浮き、不敵な笑いをしている事に。

それは御伽噺に出て来る様な様相は、言葉が想像できないのは確かだ。


「お久しぶりです・・・三か月ぶり・・・中々面白い魔法を見せていただき非常に興味深い!」


「かえるが・・・喋ったス?!」

「アレが魔族・・・浮いてる・・!?」

「アイツは!!」


ダルダとカリスは驚き、ハルーラが急に弓を射る!


「ホッ!黒髪・・・そうか・・・アイゼンの五稜郭の耳長か!」


「ハルーラ?!」


あのハルーラが急に攻撃をした事に驚いた、彼女のらしくない行動に戸惑った。しかしゼフィーの行動で俺は驚愕する。


「!!・・・レージ君!!周りを見て!」


「ヌフュフュフュ・・・いやはや・・同じ手は通用しないですなぁ・・・」


俺はハルーラの言葉と、ゼフィーの支援攻撃で気付いた。俺の周りにあの鰐蛙達が配置されていた。それはゲロロックが見せ札とし囮とした策だ。

「いつの間に・・・嵌められそうになった・・・が・・・」


あの放出と圧縮を伴った、束縛の魔法だ。今の俺でも、抑え込まれる危険は否めない・・・。油断していた・・・。助かった・・・マジで・・・。


「どうやら・・・先ほどの強化魔法はあなた独自のモノですなぁ・・・いやはや・・そんな状態のあなたとは戦いたくない・・・この意味がお分かりで?」


「・・・相変わらず強かな奴だ・・・」


あぁ・・くそ・・・多重身体強化魔法は莫大な魔力を消耗する。一旦、魔脈の活性をすれば、長時間続ける事にさして問題は無い。


問題は鎮静化だ、沈静化後の一定時間は魔眼の機能も普通の目と変わらない程に落ちている。コイツは魔眼が魔脈の活性化に左右されるのと同時に、知覚という脳への直結とする視神経が魔力のイメージに貢献するからだ。


簡単に言えば俺の弱体化を狙って現れたのだろう・・・。


最悪のタイミングだ・・・。


-50-


身を構える俺に、飛行魔法で宙に浮いているゲロロック。こちらのサイクルを見抜かれ流石に分が悪い。


「グフフフフ・・・貴方の活躍はこちらの耳にも届いています・・・いやぁ・・あの『黒妖石』を破壊するだけの剣と技・・・感服しますよ・・・」


そう言って、悠々と拍手する。神経をとがらせ・・・見上げる。踏み込んでも例の高濃度の魔力の壁で阻まれる、例の魔剣の技を使えばそれも可能だろう。


それには準備が必要だし、例の転移術で逃げられる・・・。奴は手入れした髭を扱いてニヤニヤ笑う。


「先ほどの、黒魔獣化した人間を滅殺した魔法はお見事です・・・あの魔法はこの鉱床を破壊しない様に展開したのでしょう・・・。」


「・・・オタクの指向性魔力放出圧の応用だよ・・・拘束魔法のそれだがな・・・」


俺はネタ晴らしだ・・・宙に浮いているゲロロックはフムフムと興味深そうに聞き、その特性を指摘する。


「結界・・・障壁を利用するにしてもあれほどの高密度は中々・・・最大の問題はあそこまで相殺消滅する圧縮の方が肝ですなぁ・・・。」


よく分かっていらっしゃる・・・こんな密閉空間で爆発なんてご法度も良い所だ・・・炎の形状なんてNGだ、氷は氷でこんな場所でかませば凍死する可能性が大・・・。無属性の最大の難点はその対物消滅をどう扱うか・・その答えの一つを引っ張り出した訳だが・・・。


「結構キッツイぞ・・・あれはな・・・オタクのお連れさんはそう言うのは無縁そうだがな・・・。」


マジでな・・・なんせ、今までブッパした魔法攻撃は周辺の影響なんてお構いなしだ・・・。母さんのぶっ放し具合は、山をも削ぐ。一応、俺も何度かかましたし。その度に周辺破壊っていうのは目に見えて酷いもんだと自覚もする。トゲ入りの言葉を続けて吐く。


「こっちは阿保みたいに破壊したら、文句も言われる身分だ・・・受験の時に学んでな・・・」


「苦労していらっしゃる・・・よく分かりますなぁ・・・ディーヴァ様に貴方の爪の垢を煎じて飲ませたいですなぁ・・・」


髭を扱いて、ニンマリ俺の魔法の神髄を理解している・・・。こういう奴が一番厄介だ・・・、騙し誤魔化し、ハッタリからの油断なんて言う隙を見せやがらない。


本当の強敵っていうのはこういう奴だと、確信する・・・ん・・・?


「つめの・・あか?」


「むっふっふっふっふ・・・存じないでしょう・・・ディーヴァ様がおっしゃる言葉でね・・・なんでも垢を煎じて飲ませれば煎じた垢の人物の良い所を取り込めると言う言い伝えでだそうで・・・」


ディーヴァ・・・?確かあのフルプレートの騎士か・・・?

唐突に、鉱床の奥から強烈な魔力の圧が一面を覆う。


「フン・・・まさか『黒妖石』がこんな場所に落ちていたとはな・・・」


独特な響きを帯びた声が鉱床の下り坂入り口から現れた・・・。それには鎧の軋みあう音が響き。陰から姿を現す、それは紛れもなくあの青いフルプレートの鎧を纏った騎士だ・・・。


-51-


「おやおや・・・随分、手古摺てこずっった様ですなぁ・・・」

「・・・『黒妖石』を探すの一苦労だ・・・媒体が無いと活性もしない・・・コレを感知する魔法具の開発が急務だな・・・」


ハルーラやダルダ達は愚か、戦えないジョーやジャガイモ親父も固まっている。


「いやぁ・・・時間稼ぎに私のお喋りは勘弁したいですなぁ・・・連中がいつ食って掛かるかヒヤヒヤものです・・・」


「・・・安心しろ・・・いったん沈静した魔脈の再活性にはインターバルが必要だ・・・ましてや自己強化系魔法・・・魔脈に連動する神経系統の関係もあるからな・・・奴は今魔脈のクールダウンで・・・状態だ・・・」


完全に見抜かれて、顔に現れたのだろう。剣に手をかける俺に制止の声。


「その気概は買おう・・だが残念だが・・・私が欲しいのはこの『黒妖石』だ・・・君と戦う為ではない・・・麒麟児君・・・」


「麒麟児と言うのは貴方の事ですよ・・・中々面白い意味でして・・・」


!!・・・麒麟児・・・その言葉の意味を俺は知っている・・・。こいつも俺と同じ『転生者』?


ゲロロックは探求の塊の性格の様で、さも面白そうに話す・・・でもディーヴァは気だるげに制止する。

「やめて置け・・連中には意味を理解できない言葉だ・・・安心しろ・・今の言葉は気にするな・・・麒麟児君・・・そうだな・・・あえて言えば・・綽名さ・・・そう思え・・・」


拾った『黒妖石』を握りブワリと宙に浮くディーヴァ。

そのままゲロロックと共に転移魔法の闇に溶け始め・・・。


「それではみなさんお騒がせを・・・ヌフュフュフュフュ」


独特な笑いを残して消えていった・・・。


ダルダが抱えていた、ジャガイモ親父は泡吹いて心臓発作直前と言わんばかりにぴくぴく痙攣していた・・・・。

喋る魔族、空飛ぶ魔族、異常な圧をぶっ放す魔族と地獄のフルコースを味わったのだ・・・それがジョーのその後を変えるとは思わなかったのだ・・・。



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