#13 異世界に自分と同じ様な人間が自分だけとは限らないよね
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「うわぁ・・・聞こえるわぁ・・」
「まぁ大体、こんな土砂降りと夜の更けた時間帯に向かう時点で間違っているんだよ・・・。」
ハルーラの言葉、俺は呆れていた。耳長だから生々しい声が聞こえるのだろう。
連中の目的は「敵意」ありきの行動の分、・・・灯りなんて連中にとっては邪魔になる。
で奴らは、識別のために敵の灯りを頼りに向かう訳だ・・・。
白耳長はその灯りを餌に、向かわせる様に仕向ける・・、その先に何があったとしても連中は警戒心なんてないから・・・。
自分達が自ずと罠にはまるなんてことは想像もしないだろう・・・。
俺、ハルーラは雨が降りしきる中で眺め。
その後ろに立っているカリスとダルダは、ナニがなんだか分からないって顔をしている。責任を持っているカリスは俺に問いかける。
「田吾作・・・アイツらだけで良いのか・・・俺達も・・・」
「白耳長の闘い方は自然を味方にする・・・そして敵の心情も利用する・・・そう言う戦い方でね・・・・・大丈夫・・もうそろそろ帰って来る・・・」
俺は森に目を向ける、そこにゼフィー達狩猟チームがやって来る。時間として一刻も満たないほど酷く短い時間だった。
「終わったよ、面白いぐらいに罠にかかったよ・・・全滅だよ連中は」
「さて・・・此処からが本番だな・・・」
「今から連中の拠点に向かうか・・・確かに攻めるなら今だな」
カリスは納得した様に顔を向けて俺に聞いた。
「ジョーの剣は受けるなよ?カリス・・・」
俺は奴の一撃で食い込んだ十手を見せる。
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ゼフィーの手引きを受け、森の一角が切り開けた場所へと案内される。荒っぽい開拓と杜撰な管理で、開墾と言う雰囲気は微塵も感じられない。
俺が最初に思った言葉は『環境破壊』と言うイメージが沸き、吐き捨てた。
「ここかぁ・・・強引に切り開いたのか・・・」
土砂と、荒れた土が盛り上がっており。所々にある朧な灯りが心許無い・・・廃屋に近い薄気味悪さが肌の冷え込みと伴って心なしか怪奇なムードが漂う。
無数の馬車の放逐と、
唯一の洞穴の入口へと踏み入り。肝試し気分で下り坂を進んでいく。
雨音がフェードアウトし、鼻孔を刺激が段々と湿気から砂埃へ様変わりし。何もかもがうすら悪い灰色の体内にいる様錯覚すら覚える・・・。
食道抜けて胃の様に広がった採掘所へとやって来る。見上げれば人為的な採掘痕がそこら中に見える。
「此処の魔銀石の採掘所は・・・ちゃんとしているだス・・・」
「しかし、所々で補修もしている・・・どうなってるんだこりゃ?」
「簡単さ・・・元々此処は捨てた採掘所を、今頃になってハンスの奴が金と人を使って魔銀の再採掘に尽力しようとしたのさ。」
急に聞きなれない声で驚く。まっさらな無機質な胃の中で響くもんだ、条件反射で俺は叫ぶ。
「ジョー!!」
「よぉ?ボーヤ・・いいやレージ君か?嬉しいねぇ・・・お連れはセ〇ィロスかい?」
セ〇ィロス・・・要はカリスの事だ。
ジョーは襤褸切れフードを下ろし、赤毛が冴える黒衣を身に纏っている。
カリスは自分の事とは思っていないだろう・・・。唐突な気味悪さを覚える。俺が躊躇していると襤褸切れの様なマントから銀色の腕が見えた・・・。
「早速だが・・・前座と行こうではないか・・・先ずはセフィロス君・・・」
ジョーは一瞬身を屈めると左腕から右腰に垂れた剣を抜刀。
抜刀の際と同時に真っ先にカリスへと向かう。しかしそれ以上に驚嘆すべき事態が起こる。
ヒュィィイイイイイイッッ!!
俺はデシャビュの様な音に混乱したからだ。奴が抜刀した刀から悪魔の産声を上げており、その音は密閉空間の音が反響し増幅、更には反響音が錯綜。俺とカリス以外は皆驚いて耳を塞ぐ。
「カリス!!にげろ!!」
「ぐぉお!??くそ!!」
カリスはジョーの一撃を咄嗟のタイミングで斬撃に対して垂直に飛び退いた。そのカリスの居た場所には剣撃が下りる。
産声がうなるっ!狂ったような笑いが上がったっ!更にその意直線状が導火線の様な煙を噴き上げて一直線に伸びたッ!
ビュォッ・・・・・・ギュル・・・ヴォォオオオオオッ!!
奴は一刀振り下ろしたのちに正眼の構えをとる。近場で回避したカリス、耳を抑えたハルーラ、ダルダはその技の本懐を即理解した・・・。
「な・・・なんだぁ・・??」
「ええ??」
「魔銀石の・・・鉱脈を・・・信じられないだス!!」
奴の振り下した剣撃の一閃、その痕跡が余りにもハッキリとした太刀筋を残していた。そこからひび割れる事も無く、均一の線を残しハッキリとした斬撃の深さが描いている・・・ただの岩肌ではない・・・なんせ魔銀石の鉱脈をスパッと斬って見せたのだ・・・。
「ぬぉおお!?ありゃぁぁあ・・・なんだ??アイツの刀身・・ボヤッっとしてやがる・・・」
ヒュィィイイイイイイッッ!!
ジョーは不敵に構えていた、手に持っている刀がガウスで暈したように・・・ぼんやりとしていたのだ。
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「・・・躱したか・・・その大きな刀で受け止めてくれると思ったんだがなぁ・・・」
(あ~・・クソー・・・田吾作から注意を受けなければ・・・受け止めていたぜ・・・。)
カリスは俺の方を忌々しく見ているようだが、それどころじゃぁない・・・。
何なんだ・・アレ・・?
魔法剣の一種か?それとも別の何かか?にしても何で剣がぼやける?どうなってる?
次々と思う疑問に狼狽する。
カリスは剣を抜刀する・・・多分アイツの剣は、剣ごと斬り捨てる奴だ・・・。
「・・・魔銀石を呆気なく斬って捨てるってどんだけ・・・」
震え声混じりのダルダ、俺はそんな言葉を耳にし、抜刀し構えた。クソ・・・想像以上に厄介な奴だ・・・初対面の時はフードで判らなかったが・・・。
「ハルーラ・・ゼフィー・・・アイツの眼を見ろ・・・」
俺の言葉に二人が震える。
「なんだアレは?悪魔の眼か?!」
「アレは・・・」
ゼフィーは恐怖し、ハルーラは言葉を続ける。その言葉は俺の錯覚では無かった。
「『源魔眼』・・?!」
「・・・アイツは『魔眼』になる一歩手前になるまでの魔脈を持っているのか・・・ダルダ・・・スマン・・・コイツ持っててくれ」
そう言って俺は眼帯をとる。
なりふり構う訳にはいかない・・・俺は魔眼を開放し、奴の注意をひく事にする・・・。
それは嫌な予感がした・・・それは・・・奴が俺と同じ『転生者』ではないかと言う疑念がよぎったからだ。
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