#14 都合よく土壇場で新しい技が出来るのはちょっとおかしいよね


-40-


ジョーは得意げに刀を構え直し、俺の眼を見て驚いている。奴の言動に幾分怪しさを醸しだした。


「なんだよお前・・・中二病みたいな目ぇしてるな・・・それ・・・」


「片目魔眼だったのか・・・しかも六星・・?」

「秘密にしてくれ・・・それに・・・」


ジョーに対する警戒を怠れない・・・カリスの反応で目配せをしたいが。油断ならん・・・。


「気にするな・・・君以外に興味はない・・・村へ向かった連中は全滅・・・此処にいる奴らは俺が斬り捨てたからな・・・」


そんな言葉をサラリと吐き捨て。

バッと距離を詰めて、うねりを上げて斬撃を繰り出し一気に振り下ろす。


ヒュィィイイイイイイッッ!!


ビュォッ・・・・・・ギュル・・・


振り下した斬撃。

空を切る・・・脅威的な斬撃の牙は猛威を振るった、地に触れる事も無げに土煙を上げる・・・。その黒い痕を作り上げた異常特性は恐怖しかない・・・。


ヴォォオオオオオッ・・・ギャリリ!!


異常な異音。

この世界には不似合いな音で、何と言うか浮き上がっており兎にも角にも違和感しかない・・・。

回避しきってもその恐怖で汗ばむ。


「・・・!!」

「これは俺が編み出した・・・『ハイ・フィークエンシー・ソード』・・・」


は・・何を言い出す・・?

俺を含めて理解できない顔を見て、奴は改めて言い直す。


「こうも言う・・・『高周波剣』ってね・・・」


-41-


「こうしゅうはけん・・・?」

皆何を言っている?っていう顔だ。俺も驚いていた、全く別の事でだが・・・。


「まぁ・・・この世界の人間にはわからんだろう・・・有り体な言葉で説明すりゃぁ・・・魔力の微量な粒子を震わせるって事さ・・・そうすると切断効果を高められるって事よ・・・異世界人の君らは理解できない理屈だろうがな・・・。」


俺は掌から、『螺閃輪』を繰り出す。ジョーの眼が変化したのは魔脈が成人となった体でありながら成長を促してしまい・・・魔眼化・・・覚醒では無く蕾のままになった事で半端な状態になったのだ・・・。


「・・・『源魔眼』になったのも・・その剣技を編み出したお陰か・・・」

「へぇ・・・投擲武器・・・」


俺は奴が言い終わらない内に、『螺閃輪』を投げた。


一気に突き進む『螺閃輪』、しかしそれが真っ二つになる。

それは奴の『高周波』の斬撃の一閃だ、その所作は余りにも迅い!あの産声を上げることなく斬り捨てる動き。

正統の訓練を受けた東方の技を繰り出す上にその刀剣は、『高周波』だ・・・。


「・・・っていうか・・普通に帯びさせるのか・・・」


奴は剣撃と言う剣撃に、『高周波』を帯びさせている訓練をしている・・・。俺の十手が食い込ませた剣撃の正体もそれと無く理解できた。


再度『螺閃輪』を編み出す・・・しかし・・普段発生させる色合いより発光が鋭さを増す・・・イチバチの掛けは好きではない・・・。


「あの時の奇襲も、短剣に・・・その『高周波』を帯びさせたな・・・?」

「・・・ご名答・・・あの時斬れなかったのは驚きだったがな・・・」


ゾッとする・・・無意識なの十手に魔力を帯びて居なければ死んでいたわけだ・・・。

そんなやり取りと並行し、ジョーが斬り込んでくる。俺は両足を肩幅に広げ腰を軽く落とし臨戦態勢に入る。


「ハッ・・・フッ!!」


ジョーの正眼からの突きによる初撃を繰り出す。腰を俺より深くし、ひざを折って踏み留まる。蹴り足の右足が一歩が前、突き出た左手の刀剣。東方戦技『木葉刃』を繰り出す。


ヴュォオォオッッッ・・・ギャリィィッ!!


刀身の朧な幻影も重なる刺突技からの左右に躱しても対処できる・・・『高周波』とやらの恩恵が色濃く、相性も良い戦技・・・もちろんそれが『回避』されたらである・・。


「ぐぅ?!!」


ジョーは顰める顔を浮かべた刺突技が阻まれ、剣の切っ先から異音が発した・・・金物でもぶつけたかの様な金切り音を上げ、俺の掌の『螺旋輪』から異常な光の粒子が飛び散っていいる。

・・・山勘とは言え成功していた、魔法に対する知識と分量には分があった様だ・・・それも母から練り込まれ続けた魔法鍛錬のお陰と言うモノだ・・・。


「なに・・・さっきの『螺閃輪』とは・・・あれはブラフか!!」

「生憎、こっちは魔法に関しては数段上だ・・・」


こっちは粒子を徹底的なまでに、極小で構築し。同等の大きさまでに形成している。粒子の細やかさっていうのは、所謂濃度に関係する・・。


魔剣の強度にも比例し、それが攻撃への転用にも効く。


「レージ・・・前より魔法力を上げたか?」

「いいえ、密度を上げたのよ・・・だから奴の剣撃が通らない・・・」


ハルーラとゼフィーがやり取りをする、魔法の知識はハルーラの方が上で俺のしている事を即座に理解する。


「・・・密度・・・そうか・・・魔法の粒子そのもの自体を更に小さくしそれを形成した・・・俺よりはるかに小さい粒子で形成すれば・・・なるほど・・・」


ギュィン!!


突き攻撃を止められ、暫く押し合っていた・・・うんともすんともしないと判断したジョーは身を引いた。

圧し切ればよかったが・・・下手に優位に立つと先の読めない相手が何をしでかすか分からない・・・なんせ奴は俺と同じ・・・『転生者』だ・・・どんな奴か皆目見当がつかない・・・。


少なくともこれだけは解る・・・。


前世では俺よりずっと頭が良い!!


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『高周波』なんていう発想をだれがする・・・こっちは高密度の魔力ごり押し戦法しか使えん力技だ・・・。


「警戒か・・・俺の剣を受け止めたっていうのに・・・」

「レージ・・・どうした・・?」


フツーはそーする・・・アホみたく突っかかっても、その剣でこっちの魔剣を不意にはしたくない・・・あぁ・・くそ・・・形状維持を伴った剣技が使えれば・・・。こういうやり取りに疎いゼフィーがイラつく・・・。


「・・・魔剣ごと叩き切る相手だ・・・大事な魔剣を斬り落とされたくねぇ・・・アイツの魔剣だって・・・あんな上等品・・大事なもんだ・・・だからわかる・・・」

「しかも・・・レージ君の魔力は超安定だから、魔法剣が使えないっていうか・・・元々魔力の形状が安定しない騎士だから魔法剣なのよネ・・・」

「むしろ、レージさんが形状魔法を戦技で使った処見た事ないダス・・・」


カリスは俺の気持ちを代弁し、ハルーラが俺の特性を見抜いていた。ダルダはその証拠を提示してゼフィーがそれで理解してくれた。



完全な膠着。お互いの技で打ち消し合う以上決定打は無い、平行線のにじり寄り。


苛立ったっていうより不甲斐なかった・・・。ダルダ父が再研摩した魔剣を活用できない事に・・・。イラついた気持ちで思わず魔脈を通して、魔力が魔剣に流れる・・・。


不意に、死角から目に痛い光が入って来る・・・。


「?・・・!!」


それは俺の魔剣にある、妙な石が光っている。驚きに目を配る事も出来ない・・・だが、魔剣から何かが流れ。逆流する、それは脳に情報が入る感覚に似ていた。白昼夢の様な錯覚を起こす。


魔剣を握り直す、ダイレクトに魔力が流れて魔導師の使うロッドの様な印象にも似た感覚が沸く。


『螺閃輪』を魔剣の切っ先に誘導する・・・。不用意な所作ながら俺はその現象に驚きを隠せない・・・。


「これ・・コイツは・・・」


「なに?!」


『転生者』としての知識を絶対とする、ジョーの顔はあからさまに驚愕し『高周波剣』の脅威となりうると直感する。

奴は踏み込めなかった。・・・大体、奴の知識は前世の知識を傾向している、この世界の未知なる理と現象を恐れているのだ。

一番の原因は『螺閃輪』で受け止められた事、それが奴の警戒の種になった。


俺の『魔剣』が芯となる、『螺閃輪』の輪が切先から鞘の如く覆う、『螺閃輪』が鍔の様に維持され、鍔を覆うと刀剣の石から光の脈が溢れかえる。


『魔剣』の切っ先から鍔にかけて、極薄の光の膜。その形状は武骨な二等辺三角形の様な幅広で、力強いバスターソードの様なシンプルなフォルムへと様変わりする。


俺は無意識に直感する。


これならいける・・・拮抗が崩れる。

感知した、ジョーの魔眼も輝き腰を落として身構えた。



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